ビジネス

2022.12.14

世にない「がん治療薬」開発に挑む 研究者出身CEOの紆余曲折

FerroptoCure CEOの大槻雄士(撮影=曽川拓哉)


──VCにはどんな話が刺さっていると思いますか。

よく質問されるのは「フェロトーシスの薬がないのは、その作用が創薬に役立たないからなのか、まだ実用化されていないだけなのか」。

僕はこう答えます。

「まだです。実際にアメリカの上場企業が、フェロトーシスを用いた抗がん剤を作ろうとしているので、これからトレンドが来ます。今、がん医療では免疫治療がメインですが、その次に来るのがフェロトーシスだと思っています」

事実、フェロトーシスが報告されたのは2012年で、10年しかたっていないんです。

僕らの実験データや科学に基づいた話を、理解してもらうことを大切にしています。マーケットやビジネスについては、先方が圧倒的に詳しいですから。

──製薬とビジネスの両方がわかる起業メンバーを集めるのは大変だったのでは。

リンクトインでメッセージを送ってみたり、創薬・バイオビジネス人材に特化した採用プラットフォームを活用してみたり。最終的には知り合いを通じてお願いするのが一番納得できるメンバー集めになりましたね。

「資金調達まで、まずはアドバイザーとして加わりましょう」という感じで入ってもらいました。

──人材集めで重視したポイントはどんなことですか。

経験です。何ができるかというよりは、何をやってきたかが大事だと思っているので。あとはどれだけ新しいことを理解してくれるか。僕らがやっているフェロトーシスは、まだそれを使った薬が世の中にないので、そこをわかってくれるメンバーが集まってくれているのは強みだと思います。

──大槻さんご自身の強みは。

VCさんからは「粘着質な情熱がありますね」と言われました(笑)。実際そうかもしれません。パッションを前面に出して、ガンガンやるのは疲れて、プツンと気持ちが切れちゃいますからね。

そもそも創薬は、実用化まで5年10年かかる世界。その間絶対情熱を切らさないよう、長く走れるようにしておくことに重きを置いています。諦めない、途切れない。心を折らずに走り続ける。

薬を創るとはそういうことなんじゃないかと思います。

文=木原洋美 編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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