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2022.12.14 08:30

世にない「がん治療薬」開発に挑む 研究者出身CEOの紆余曲折


国の承認を得た薬は、ヒトでの安全性や薬物動態の試験はもう済んでいます。そのため新しい効能が見つかったときに、いくつかの試験をスキップでき、一から新薬開発を行うよりも格段に早く、低コストで、薬を社会に届けることができます。

抗がん剤は一回数百万から数千万円もする高価な薬というイメージが、一般的にはありますよね。僕らは裕福ではない国の人たちでも使えるような価格の薬を創りたいと思っています。

「このままだと研究開発が止まる」


──苦労しているのはやはり資金調達ですか。

そうですね。実用化するには、きちんとした臨床試験が不可欠です。しかしそれにはお金がかかる。僕らの試算では4億円強が必要。どうしても足りないんです。

ある程度まで段階を進めることができても、製薬会社が求めているレベルの試験を行うのには不十分。昨年の秋「このまま行くと研究開発が途中で止まりかねない」という状況になり、起業に向けて動き出しました。

大槻雄士

そのタイミングでちょうどIdP(イノベーションデザイン・プラットフォーム:東工大、慶應大、東京医科歯科大、東大が2021年3月に立ち上げた大学発スタートアップ育成プログラム)の公募があり、ダメもとで応募したところ採択されたんです。そこから、IdPのギャップファンドやメンタリング支援を受けながら起業準備を進めました。

ほかにも、“がんを治せる病気にすること”を目標に掲げるNPO法人「deleteC(デリートC)」から寄付金の提供を受けたり、クラウドファンディングを行ったりして、現在も研究開発と資金集めは並行して取り組んでいます。

──アクセラレータープログラムにも助けられて、現在はベンチャーキャピタル(VC)を回っている最中ですか。

そうですね、アクセラが無かったら事業立ち上げは厳しかったですね。創業当初はビジネス人材もいなかったので、VCにまったくコネがない状況でした。アクセラはVCにもつないでくれたし、資金調達をするうえでどんな話をしたらいいかも教えてくれました。

すでに数社と話が進んでいます。
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文=木原洋美 編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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