その数は、ますます増える可能性が高い。実際、60歳以上は人口の中で最も急速に増えている。定年後にやりたいことを尋ねると、決まって旅行が真っ先にあがる。また、60歳以上は旅行するための時間とお金がある。高齢者層が国であれば、米国と中国の国内総生産(GDP)に次ぐ世界第3位の経済大国となるだろう。
高齢の消費者が増え、そしてその購買力が高まっているにもかかわらず、FAAは60歳以上の乗客(高齢消費者)を座席調査に含めなかった。実際、この調査によると(20ページ参照)、調査を実施した業者は「身体を動かすときに怪我をするリスクが高まるため、調査参加者が60歳以上でないことを確認するよう指示された」とのことだ(米連邦航空規則[FAR121]によると、民間パイロットは65歳まで操縦桿を握ることができる)。前出の60代のコニーは事実上、機体の後部と中部の出口の中間にある23B席で女友達に挟まれて身動きが取れない、忘れられた乗客であり消費者だ。
年齢を重ねるとともに身体能力は変化する。特に日常的に運動をしていない人はそうだ。生涯にわたる身体能力を評価したある研究では、50歳代の多くがバランス感覚と椅子立ち(座った状態から立ち上がる能力)が低下し、60歳以上の人は歩行速度と持久力が低下することがわかった。加齢にともなって身体能力は落ちていくが、障害者と考えるほどではない。そのため、高齢の旅行者が障害者用のサービスを利用したり、自分自身は助けが必要だと思うことはあまりない。
航空会社とFAAは座席の大きさや出入りのしやすさ、そしてそう、快適さを見直すのではなく、業界にとって最も費用対効果の高い座席サイズと客室構成に従うよう、顧客と一般市民に求めているようだ。これは、消費者体験とサービスイノベーションへの興味深いアプローチだ。レストランは夜の利用客を増やすために限られたダイニングルームにたくさんのテーブルと椅子を持ち込むべきかもしれない。病院では1つの病室により多くの患者を収容するためにベッドを小さくし、2人部屋を3人部屋に、あるいは4人部屋用にすることも考えられるかもしれない。
人口動態からは逃れられない。公共政策に情報を提供するための調査に最大かつ最も急速に増えている年齢層を含んでいないのはよくても不完全、最悪の場合、同様に欠陥のある政策決定につながる可能性が高い。航空業界は確かに厳しい経済状況、パンデミックからの回復、高騰している燃料費、インフレ、人繰りの問題などに直面している。2020年以降の旅客需要の増大を、あらゆる年齢や身体能力の顧客に安全性、快適性、パフォーマンス、体験を提供するための機会として利用する航空会社は市場の勝者、そして業界の標準となるだろう。
(forbes.com 原文)