飛行機のますます狭くなる座席は増加する高齢の乗客には決して優しくない

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ターミナルから飛行機の入口までみんなに聞こえるような大きな声で、コニーは搭乗ブリッジで横に立つ、コニーほど興奮していない乗客に向かって「私たち、女子の週末のために向かってるの!」と上ずった声で宣言する。

コニーをはじめとするその「女子たち」はおそらく60歳を過ぎている。そして、ある程度の年齢になると、私たちのほとんどがかつてのようなほっそりとした体型ではなくなる。私が座席上の収納棚にバッグを置くと、コニーとその友達が真ん中よりも後ろの列に入り込むのが見えた。コニーは旅仲間に挟まれた真ん中の座席に座り、姿が見えなくなった。

多くの人にとって、快適さと空の旅は相反するものだ。だが、快適さは今、乗客の安全や健康につながっている。狭い座席は迅速に緊急避難する際の妨げになり、血栓などの危険な健康問題を引き起こす可能性さえあるといわれている。米メディアBloomberg Lawのリリアンナ・バイイントンが報じたように、全米航空旅客協会の役員であるダグラス・キッドは、米連邦航空局(FAA)の意見公募でこの議論を要約して「客室の過密状態は乗客の健康と安全に対する唯一にして最大の脅威だ」と述べた。キッドをはじめとする多くの人々、そして連邦議会議員たちは今、旅行者のお尻が大きくなる一方である中、航空会社が座席を狭くするのを阻止するようFAAに促して航空会社の座席縮小の動きに介入している。

連邦議会への対応として、FAAは調査を行い、座席のサイズが避難を遅らせることはないとの結果を示した。この調査結果は航空会社にとって、座席の大きさを定める連邦政府の規制を求める声に反対するためのデータとなる。バイイントンは記事で、全米航空会社協会代表ジョージ・ノバックの「乗客が感じる快適さは航空業界の問題であって、FAAや議会の問題ではない」という発言を紹介した。

そうかもしれない。もしそうなら、航空業界は現在と将来の顧客について再考し、すべての顧客に最高のサービスを提供するにはどうしたらよいかを問う必要があるかもしれない。乗客のお尻が大きくなるのと座席サイズの縮小は確かに問題だが、乗客の年齢と安全性も問題だ。

飛行機を使った出張は今後、不振が続くと多くの人が予測している。レジャー客は現在、そして当分の間、航空業界のビジネスモデルで中心的な存在だ。新型コロナウイルス感染症が流行し始める前の2019年の乗客データによると、50歳代は少なくとも年に1回飛行機に乗る人の約半分を占め、レジャー目的で年5〜10回も飛行機を利用している。
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翻訳=溝口慈子

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