そこで「まさかサメの動画なんて」と思うのではないだろうか?
実は、あなたが見ている動画が、サメに対するあなた自身の認識に影響を与えているかもしれないのだ。そしてそれが、サメの未来に影響を与えているかもしれない。
説明しよう。サメは生態系と経済の両方に貢献しているにもかかわらず、世界中で乱獲や迫害に悩まされている。最終的に、サメの保護は人間のサメに対する寛容性を育むことにかかっていると多くの人が主張しているのだ。動物種に対する「態度」や「受容性」、そして「意図的な行動」を測定することで、科学者は一般市民のサメへの認識が「寛容性度合」のどのあたりに位置するかを判断することができる。サメへの寛容性に影響を与える要因の中には、美的価値の認識、生態学的役割の理解、人間への脅威の認識がある。サメに関する知識や保護活動への参加など、いくつかの要因が影響し、サメに対する世界的な態度は一般的に肯定的であることを示す証拠がある。しかし、態度が最も肯定的な国でもサメへの恐怖は根強く残っているのだ。
それはなぜか? 一部はメディアのせいかもしれない。メディアでは、サメは通常、危害を加える人間を積極的に探す凶暴な殺人鬼として描かれている。その結果、人間はサメの保護に協力しなくなり、このような否定的な描写を打ち消す戦略の必要性が浮き彫りになった。
ソーシャルメディアの普及を考慮すると、ソーシャルメディアはサメやその他の野生動物に対する一般の人々の意識を形成する有効なプラットフォームとなり得る。実際、インターネットユーザーの27%は、少なくとも1日に1回はYouTubeのコンテンツにアクセスしている。ノースカロライナ州立大学公園・レクリエーション・観光管理学部の博士課程学生ジャスティン・ベオールが率いる研究チームは、(YouTubeを通した)ソーシャルメディア消費が視聴者のサメに対する寛容性に与える影響を測定するケーススタディを実施した。
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「実験的研究では、2020年春にオンラインで、実験前と後のアンケートを実施し、サメ関連のYouTube動画の視聴が、沿岸部のノースカロライナ州(米国)と近隣州の住民のサメに対する寛容性にどのような影響を与えるかを調査しました」と研究チームは説明している。YouTubeを選んだのは、ユーザーが長い動画をアップロードでき、人気番組『Shark Week』のコンテンツを幅広く選択できる人気の動画プラットフォームであるからだ。