研究力を世界レベルに高める大変革はどうあるべきなのか、これは配分する側がつける条件と大学側が出すアイデアのなかから決められることになる。そのプロセスが、いま、進行中だ。二十数年日本の大学で教育研究に携わり、同じく二十数年アメリカの大学で教育研究に携わった私の経験から「世界と伍する研究大学」になるためには、最低、次の3条件が必要だ。
第一の条件は、大学ファンドからの給付金を得る大学全体、もしくは給付金を得る大学院研究科は「公用語を英語にする」ことである。現在、科学系のあらゆる分野の業績や研究発表・討論は英語で行われている。英語で戦えなければ世界には出ていけない。
第二の条件は、若手研究者に、数年以内に世界的な業績を出せば、終身雇用契約(テニュア)をオファーする、という条件付きの試用期間(テニュアトラック)のポジションを多く出すことである。テニュアの定員が確保されていなくてはテニュアトラックもオファーできないので、大学ファンドからの給付金でテニュアポジションをつくることが重要だ。
第三の条件は、一流の研究者は大学の雑用(とくに入試委員や、研究とは関係のない各種委員会)から免除し、かつアメリカの大学の給与を支払うことである。ちなみに一流研究者の日米給与格差は、現在では、3倍から5倍にも上っている。この3条件をぜひ、実行してほしい。
伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に、『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。