転職戦線、異状あり。プロフェッショナル人材の採用が7倍に

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「転職戦線、異状あり」だ。

年収1000万円以上のプロフェッショナルの転職戦線に今、大きな変化が起きている。これまでの転職の常識とは“正反対”とも言える状況が生まれている。

金融業界を中心に採用やコンサルティングを手がけ、プロフェッショナルの転職を20年以上に渡って支援してきた、コトラ(東京・港区)の大西利佳子社長は次のように語る。

「この20年で、今ほどプロフェッショナルが求められている時代はありません。今は多くの企業が激変期にあります。激変期には、社内で人材を育てるような時間的余裕はありません。つまり、本当に即戦力となるプロフェッショナルが求められているのです」


コトラの大西利佳子社長

「35歳転職年齢限界説」の崩壊


プロフェッショナルの転職市場では、3つの地殻変動が起きているという。

そのひとつは「年齢の壁」がなくなったことだ。かつて転職市場には「35歳転職年齢限界説」なる言葉が存在した。これは中途採用が新卒採用の補完的な役割としてみなされていたためだった。「遅くとも35歳までに入社してもらわないと、自社の文化に同化させられない」ということだったのだろう。

この“35歳の天井”は近年、少子高齢化やそれに伴う採用競争の激化によって上昇傾向にあった。そして今や、この天井が完全に消え去ったのだ。

プロフェッショナルの転職市場での「天井」の移り変わりについて、大西社長は次のように語る。

「これまでも『年齢が高くても採用したい』という会社は確かにありました。ですが、そのほとんどは、中小企業が管理業務を強化するために、大企業での管理職経験者を採用するようなケースでした。ですが、今ではメガバンクのような、日本の伝統的な名門企業でも年齢を気にしないようになっています。優秀であれば50代でも、大手から引くてあまたの状況です」

業界や年齢の垣根を超えて採用


2つめの変化は、「異業種人材への需要の高まり」だ。転職といえば、これまでは同業他社への異動が一般的だったが、別の業界の人材が強く求められるようになっている。

「たとえば金融業界であれば、ESGに関連した人材の需要が高まっています。金融業界一筋では培うことが難しい、専門性を持った人材です。ですから、製造業などでこの分野を専門にしてきた人材が、金融業界で引っ張りだこになるというケースもあります」

また、近年FinTechが注目を集めているが、こうなってくると、金融業界の大手企業にとってこれまで意識することすらなかった、世界的なIT企業やスタートアップ企業までがライバルとなってくる。こうした業界の激変期に対応するため、自ずと業界や年齢の垣根を超えて、優秀な人材を募る必要が生じてきているのだ。

実際に、こうした人材の採用割合は増えている。たとえば、従来は全体の中途採用枠が100人だとすると、高度専門人材の割合はせいぜい10人程度だった。それが今では、100人のうち70人を専門人材が占めるようになっている。
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文=下矢一良

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