ネット犯罪の多様化
先ほどは一般の犯罪集団によるネット犯罪についてお話ししましたが、中には政府によってなされる攻撃もあります。政府が他国などに対しての攻撃を仕掛けるサイバー戦争ですね。これは基本的に二種類に分けられて、一つは諜報活動、もう一つは妨害活動です。
諜報活動はオンライン上で機密情報にアクセスするスパイ行為で、イメージしやすいかと思います。妨害活動の方はサボタージュといわれるもので、サイバー攻撃によってインフラシステム等を機能不全にする、というものです。
最近でいえばロシアとウクライナの戦争において、ロシアが何度もウクライナ側に停電を起こさせるサイバー攻撃を仕掛けたものの、食い止められた、といったケースがあります。
この戦争に関して、フィンランド政府としても弊社としても全面的にウクライナに協力を惜しまない姿勢をとっています。サイバー戦争という観点からみると、旧態依然とした攻撃を続けるロシアに対して、ウクライナは見える形にも見えない形にもうまくインターネットを利用していると思います。
ところで、先ほど基本的にサイバー攻撃には一般による「犯罪」と国家による「サイバー戦争」があると申し上げましたが、世界で唯一の例外があります。その例外というのが北朝鮮です。国家として史上唯一、サイバーアタックをお金を盗む行為に用いた例となります。我々が把握しているだけでも、北朝鮮が国際銀行のシステムに侵入する、あるいは仮想通貨の交換市場に侵入してビットコインを盗もうとする、また身代金ランサムウェアのメールなど送るという数々の行為が観察されております。妨害行動を通じてお金を盗もうとする唯一無二の政府です。
これからのサイバーセキュリティ
人類が誕生してから10万年もの間、人間はオフラインの世界で生き続けてきました。そかし我々は急速にオンライン化が進みこれからもオンラインであり続ける社会の中に生きています。
そのような環境下で顕在化してきた課題を解決するのに不可欠なのは、なんといってもオンライン/オフラインでの国際協力です。サイバー犯罪者はやはり発展途上国出身者であったり、貧困の背景をもつことが多い。もし彼らがプログラミング言語・プロトコルの知識があり、例えばヘルシンキや東京にいるということであれば、仕事を得るのもおそらく容易であったでしょう。スキルはあるけれどもこれまで機会を与えてこられなかったのです。
こういった問題は、突き詰めて考えていくと技術というよりはやはり社会の抱える問題といえるでしょう。私はコンピュータを直すのは得意ですが、この社会の問題は一人では解決できません。簡単な解決方法は転がってないということですね。
これまで様々なサイバー脅威の話をしてきたので、先行きが思いやられたかもしれませんが、実はネット社会の未来は暗いものではないのです。逆に、現在の実際の世界はかなりいい状態にあるといえます。