宇宙の塵の小さな粒子が、100億ドル(約1兆4000億円)の宇宙望遠鏡の18枚のベリリウム製からなるセグメントに1回だけでなく14回も衝突し、修復不可能な損傷を与えていたことをNASAがブログで明らかにした。
「予想していたとおり、これまでに主鏡に対する14回の測定可能な流星塵衝突があり、平均して月に1回か2回起きています」とメリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センターのウェッブ主任ミッション・システム・エンジニアであるマイク・メンゼルはいう。「その結果生じた光学的欠陥は、1つを除き、望遠鏡を建設した際に予算上想定されていた範囲内でした」
その例外が起きたのは5月で、流星塵が1つ、JWSTの6.5メートルの主鏡を構成するベリリウムのセグメントに衝突した。「避けられない偶然事象」として分類されたその事故によって、望遠鏡はわずかに調整がずれた。エンジニアらは損傷を受けたセグメントに対応するために18枚の鏡を調整した。
宇宙は活動するには危険な場所であり、宇宙全体からやってくる宇宙線や太陽の過酷な紫外線と荷電粒子、恐ろしい速度で飛んでくる流星塵などの脅威と常に隣り合わせだ。
しかしJWSTのエンジニアたちは、貴重な宇宙望遠鏡がこれ以上損傷を受けるリスクを減らすべく、すでに回避策をとっている。NASAのワーキンググループは、2022年5月の衝突を統計的に稀少な事象であると結論づけたが、以来、巨大な宇宙望遠鏡は「流星塵回避ゾーン」と呼ばれるものから顔を背けている。望遠鏡が軌道を進む反対方向からは、より多くの流星塵がより高速度で飛んでいることが統計的にわかっているため、その方向を観測する時間を最小限にしているという意味だ。
中でもリスクの大きい期間が流星群で、これは内太陽系に残された粒子によって起こる。これは当面の問題になりうるシナリオであり、2023年5月と2024年5月にウェッブがハレー彗星の流星塵の流れの中を進む時が特に懸念される。
「望遠鏡の鏡に正面から衝突する流星塵(望遠鏡の移動方向とは反対方向に動いている)は、通常の2倍の相対速度と4倍の運動エネルギーをもっているので、可能な限りこの方向を避けることは、JWSTの卓越した光学性能を10年単位で延長する効果があります」とNASAゴダードのウェッブ光学望遠鏡エレメント・マネージャのリー・フェインバーグはいう。
結論としてJWSTのスケジュールが見直され、科学的緊急性よりも、最も安全な時に目標物は観測することが優先される。例外は太陽系の目標物で、それらは時間的制約がはるかに強い。
スペクトルの赤外線部分を見るこの100億ドルのウェッブ宇宙望遠鏡は2021年のクリスマスに打ち上げられ、2022年2月以来、地球から約160万キロ離れたラグランジュ点2(L2)を周回している。
澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。
(forbes.com 原文)