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2022.11.27 08:15

遠隔勤務で増えた従業員監視ソフトウエア 逆効果な理由とは


3. 従業員は規則を破りやすくなる


従業員監視ソフトは規則違反を減らすよう設計されているものの、逆効果をもたらしかねない。

ハーバード・ビジネス・レビュー誌に今年掲載された記事によると、「監視されていた従業員らは許可されていない休憩を取り、指示を無視し、職場のものを破損させ、オフィスの備品を盗み、わざとゆっくり働くなどの規則破りの行動を取る確率が大幅に高かった」ことがワイオミング大学の研究者らの調査により明らかになった。

従業員がこうした行動を取る理由は何だろう? 同研究からは、従業員は監視されると自分の振る舞いへの責任が減ったように無意識に感じ、規則を破りたいと思いがちになることが示された。

4. 従業員の監視には法的な問題がある


米国では、職場における監視に関して2つの主な制約が存在する。1986年の電子通信プライバシー法(ECPA)とプライバシーの侵害に対する慣習法上の保護だ。

米国では、業務時間に従業員の活動を監視することは完全に合法とされている。さらに、大半の州法や連邦法で組織は、会社所有の機器上で起きることは何であれ調査することが許されている。それでも、差別やプライバシーの侵害、不平等な労働慣習などの訴えを含め、雇用主には法律上の問題が発生する可能性がある。

他にも、未払い賃金や残業代の請求もあるかもしれない。米国では例えば、公正労働基準法が適用される従業員がコンピューターを使わない作業を行い、それにより週の労働時間が40時間を超えた場合、残業代を支払われる権利が発生する可能性がある。

5. 従業員の監視はマスコミの悪評を招きかねない


従業員を監視すれば、企業の広報活動では悪夢のような事態が生じかねない。不動産データ企業のコースター(CoStar)はビジネスニュースサイト「インサイダー」の調査で、遠隔勤務の従業員を監視し不快な労働文化を作っていると非難された。また、監視活動の一部は従業員が知らないうちに行われたと主張されている。

こうした苦情が本当かどうかは別にして、この件に関する報道はポジティブとは言えないものだった。

新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから、従業員の監視にデータ監視ソフトを使用している雇用主の数は倍増した。これはたとえ合法だとしても、倫理的なことだろうか? 会社が従業員に送るメッセージは「あなたを信頼していない」という明確なものだ。

より良いアプローチは、従業員エンゲージメントやコミュニケーション、表彰プログラムなど生産性水準を上げると分かっている分野にこうした投資を転換することだろう。そうすることで初めて、従業員が退職したくないと思うような企業文化を作ることができる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=出田静

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