5人は、消費研究者のアンドレアス・ハジダキス、メディア研究者のジェイミー・ハキーム、社会学者のジョー・リトラー、北米研究者のキャサリン・ロッテンバーグ、心理学者のリン・シーガル。同著は、「この世界はケアを顧みないことが君臨するする世界」(岡野八代、冨岡薫、武田宏子訳、解説)と指摘。
ケアやケア労働は長く女性と結び付けられ「非生産的」だとされてきた。さらに、新自由主義的な資本主義の台頭が既存の不平等を深刻なものにした。同著のなかでは「私たちは相互に依存しながら生きている」というケアの基本的な認識を共有しながら、ケアを前面かつ中心におく「ケアに満ちた世界」をいかに形作れるか─を提唱している。
共同執筆者のひとり、英ノッティンガム大学教授のキャサリン・ロッテンバーグに社会でますます重要となる「ケア」の意義と新しいケアのビジョンについて聞いた。
──なぜいまケアの概念が重要なのでしょうか。また、ケアはどのように定義されるのでしょうか。
キャサリン・ロッテンバーグ(以下、ロッテンバーグ):ケア宣言が提唱している「ユニバーサル・ケア」では、ケアが永続的な社会のキャパシティであり、人間と人間以外の生き物の幸せと繁栄のために必要なものすべてを育むことにかかわる行為として理解されている。
ケアとは、可能な限り多くの人々とこの惑星のすべての生き物、そしてこの惑星そのものが繁栄できるような、政治的、社会的、物質的、そして感情的なコンディションを提供できる、個人および社会共有の能力のことである。
──ケア宣言が執筆された経緯を教えてください。
ロッテンバーグ:共同執筆者のグループ、ケア・コレクティヴは、2017年にロンドンで研究者(かつアクティビスト)の読書会としてスタートした。ケアの概念についてさまざまな角度から考えてみようというものだった。