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2022.11.10 11:15

歩く振動だけで発電する技術を90倍に性能アップ アナログ的な技で実現

リリースベース(松村)
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Getty Images

スマートフォンにしてもスマートウォッチにしても、1日に1度は充電が必要です。これをより長くもたせられないかという研究は、さまざまな分野で行われていますが、その中の1つに歩行運動による振動で発電することで、小型電子機器を駆動させようというものがあります。

振動する物体がもつ運動エネルギーから電力を取り出す技術というのは、ある程度確立されていて、モーターや洗濯機などの周期的で一定な機会的振動であれば、マイクロワットレベルの電力を得ることが可能です。

しかし歩行運動の場合、同じ振動発電素子を使っても発電量が大幅に低下する問題がありました。これは、歩行運動は衝撃的な振動で非安定的であるため、振動エネルギーをうまく変換できないのです。

より多くの発電量を得るためには、素子の面積を大きくする必要があり、それでは小型電子機器に組み込むことが難しくなります。そこで、1円玉サイズの振動発電素子にU字型の構造をもつ振動増幅パーツを装着し計測したところ、発電性能は従来より約90倍に増大させることに成功したと、大阪公立大学大学院と兵庫県立大学大学院、大阪産業技術研究所の研究グループが論文を発表しています。



このことにより、振動発電素子の面積を大きくすることなく、振動増幅パーツを工夫することで歩行運動でも効率よく発電できることが期待されます。大阪公立大学大学院 工学研究科の吉村武准教授は「現状では、この技術で動作させることができる電子機器は非常に限られていますが、今後、電子デバイスの省電力化も進んでいくと予想されることから、充電不要なウェアラブル端末の実現に貢献する成果になると期待しています」と語り、日常生活をしているだけで充電不要なウェアラブル端末の登場が、そう遠くない未来に実現するかもしれません。

文 = 飯島範久

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