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2022.01.26

宇宙でも美味しいイチゴが食べられる? 東大発の「受粉ロボット」とは

HarvestXを立ち上げた市川友貴

クリスマスシーズンから始まり、春に向けて旬を迎えるイチゴ。この果物に情熱を注ぎ、「年中安定的に生産できるようになれば」と、イチゴ栽培の完全自動化に取り組む起業家がいる。

近年、天候に左右されない作物収穫やフードマイレージの削減のため、世界的に植物の工場生産が進んでいるが、レタスなど葉物野菜の生産がメインで、イチゴなど果実類を栽培する工場はほとんど存在しない。その理由に“受粉”の難しさがある。

工場にミツバチなどを放って虫媒する方法はあるが、すると工場栽培の利点である「完全無菌状態」は保てなくなる。また、工場という環境下ではハチがストレスで弱りやすく、その管理も課題となる。



市川友貴は2020年8月、東京大学の「本郷テックガレージ」の支援プログラムで、HarvestX(ハーベストエックス)を立ち上げた。現在は7人の従業員をかかえ、「完全自動栽培で農業人材不足や食料の安定生産への貢献」をミッションに、受粉ロボットの研究開発を進めている。

自称「根っからのオタク」という彼は、休日はマンガを読んだり、アイドルのコンサートを楽しんだりするという24歳。なぜ「イチゴの完全自動栽培」に情熱を注ぐのか。創業までの経緯や事業について、話を聞いた。


──市川さんが“ものづくり”に興味を持ったきっかけは。

子どものころからSF映画が好きで、なんとなくロボットに興味がありました。あとは、母親が木工などの「ものづくり」が好きだったので、その影響もありますね。

中学の頃からは電子基板を改造したりプログラムを書いたりするようになり、高校はその道に進もうと、「スーパーサイエンスハイスクール(SSH:文部科学省が指定する、理科・数学教育を重点的に行う高校)」を選びました。

そこでは、ロボットの試作などをしていました。ただそのころは、何か目的があったわけではなく、単につくることが好きでやっていた感じでしたね。

千葉工業大学に入学してからは、インターンとして電機メーカーで工業製品の開発に携わり、世の中に製品が出ていく過程を一通り体験することができました。その時、一緒に働いていたのが東京大学の学生で、その縁から「本郷テックガレージ」に通うようになったんです。

テックガレージには、社会課題に対して自分たちの技術をどのように使うかを真剣に考えている人たちがたくさんいました。彼らの姿に触れて、自分が持つロボティクス技術で解決できる社会課題はないかと考えるようになり、その探求に面白さを感じるようになりました。
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文=西崎圭一 取材・編集=田中友梨 撮影=小田駿一

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