企業がステークホルダー・アプローチをより重視し、「正しい行動を取ること」に力を入れるようになるなか、企業には同時に、立ち上がり、物事をきちんと実行することが求められている。
つまり、企業には顧客やサプライヤー、メディア、コミュニティー、従業員など、自社に関連を持つ多くの存在ために、意思決定を行うことが求められている。そして、ファッション・ブランドの間では、短期的な利益の追求よりも長期的な繁栄を重視する方向への変化が進んでいる。
ナイキは先ごろ、契約していたブルックリン・ネッツ(NBA)のスター選手、カイリー・アービングとの関係を一時凍結すると発表した。予定していたシューズ「カイリー8」の最新モデルの発売は、中止するという。
これは、アービングが自身のSNSで、反ユダヤ主義的な映画として広く知られる作品のリンクを投稿したためだ。ナイキはこの迅速な決断について、「ヘイトスピーチが存在する余地は、ナイキにはないと考えており、いかなる形の反ユダヤ主義も非難する」とコメントしている。
ナイキがアービングとの契約に基づき、2014年から販売してきたバスケットシューズは、同社に年間およそ1100万ドル(約16億円)の利益をもたらしていると推定されている。
こうしたナイキの対応の背景にあるのは、競合のアディダスが同様の問題について、「正しい判断を下すまでに時間をかけすぎた」と批判されていることだ。アディダスが反ユダヤ主義的な言動を理由としてカニエ・ウェスト(イェ)とのパートナーシップ契約を解消するまでには、2週間以上がかかった。
ウェストはパリ・ファッション・ウィークで、白人至上主義者のスローガン、「White Lives Matter(白人の命は大切)」が書かれたシャツを披露。ほかにも反ユダヤ主義的な発言や、白人警官の暴力によって死亡した黒人男性ジョージ・フロイドについて、死因は実際には、「(合成オピオイドの)鎮痛薬フェンタニルにある」と発言するなどしていた。
ウェストとの契約は、アディダスに年間およそ20億ドルの売上高をもたらしていたと見られている。