テクノロジー

2022.11.10 14:00

私たちは波を打って変形を繰り返す奇妙な泡の中で宇宙を旅している

太陽と太陽系は太陽圏と呼ばれる泡の中に入って星間空間を移動している(NASA'S GODDARD SPACE FLIGHT CENTER)

私たちの太陽系の果てには何があるのか? それは簡単? 星間空間! そのとおりだが、両者の境界はあなたが思うほど明確ではない。

Nature Astronomyに掲載された論文は、太陽系の周囲にある、傾斜して大きさの変わる表面が波打っている磁気の泡について書いている。

この泡は太陽圏(ヘリオスフィア)と呼ばれ、太陽圏境界(ヘリオポーズ)という実際の境界がある。そしてこれこそが、宇宙線が地球に当たりDNAを変異させて全人類の命を奪うのを防いでいる。

この新たなデータは、2008年に打ち上げられて以来、地球を周回して太陽圏の形と物性を観察しているNASAの星間境界探査機(IBEX)から送られてきた。IBEXは6カ月ごとに全天空の地図を描くことができる。

その後、無人探査機ボイジャー1号とボイジャー2号が太陽圏境界を越え、太陽圏から出て今は星間空間の奥深くへと移動している。

この2台の探査機は1970年代終わりに打ち上げられたため限界はあるものの現地での観測が可能だが、IBEXははるか遠方からだが、ずっと広い視野で見ることができる。

IBEXが調べていることをつきつめていえば、太陽風の強度だ。太陽風は太陽から放たれる荷電粒子だ。それが消えたところが太陽の影響がなくなった場所であり、それが太陽系の論理的範囲となる。

IBEXのデータから、2014年後半に太陽風の動圧が半年間でおよそ50%上昇したことで、衛星が太陽圏と太陽圏境界を立体的に分解し、それらが局所的に星間物質に対して波打ち、斜めになっていることが確認できたことがわかった。

さらに、太陽圏の大きさが、どこを測ったかによって著しく変化することも発見した。

IBEX
アーティストによる探査機IBEXのイラスト(NASA)

つまり太陽系を包む泡は均一でも対称でもなく、その形状と大きさには膨大なばらつきがある。その違いは16天文単位におよぶ。これは太陽と地球の距離の16倍であり、太陽から天王星までの距離よりわずかに短い。太陽圏は太陽から約100天文単位(冥王星の楕円軌道の最遠点の距離の約2倍)まで拡大すると考えられてきたが、本研究が示すように、その大きさには膨大な幅があり、いつ、どこを測るかによって異なる。

このIBEXのデータをボイジャー探査機が集めたデータと比較すると、北半球と南半球の太陽圏境界の範囲が大きく異なることを示している。2012年にボイジャー1号が通過したときの太陽圏の範囲はその後、拡大したと思われるが追いつくほどではない。

しかしこの結果は、宇宙船が太陽系を脱出することは可能でも、何年か後に再び飲み込まれるかもしれないことを示唆している。

私たちを包んでいる泡の大きさと形状が太陽周期に従って変化している可能性はある。太陽にはおおよそ11年の周期があり、その間に太陽風の強さは一進一退している。しかし、もう1つ重要なのは、太陽風が星間空間の磁場とどのように相互作用を起こしているかだ。

ミッションの終わりが近づいているIBEXは、2025年のNASAの星間マッピングおよび加速探査機(IMAP)に置き換えられる。IMAPは観測の範囲、精度、解像度のいずれも改善されている。空全体のマッピングをもっと頻繁に行えるだけでなく、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)と同じように、地球から約150万キロ離れたL1点軌道を周回する。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

【お詫びと訂正 2022年11月11日 14時30分】
記事初出時に間違いがありました。正しい文章は以下のとおりであり、修正いたしました。ご迷惑をおかけした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。

10段落目
誤 これは太陽と月の距離の16倍であり
正 これは太陽と地球の距離の16倍であり

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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