「バーチャルワーカーのアリー」が大手医療保険会社で仲間たちの心をつかむ

バーチャルな同僚がすべての情報を整理してくれる(Getty Images)

「バーチャル従業員」は、もはや現実のものとなったのだろうか? 北米最大級の医療保険会社であるHumana(ヒューマナ)では、インテリジェントなバーチャルアシスタントが1人前の従業員として受け入れられている。このアシスタントは、道具や機械として見られているわけではなく、誰かの代わりでもない。むしろ、医療や保険のプロフェッショナルたちといっしょに成長し学んでいくとても役に立つ「同僚」なのだ。

Humanaのエンタープライズ・オートメーション戦略推進責任者のジョー・ベクテルによれば「Allie(アリー)」と呼ばれるこのインテリジェントアシスタントは、同社の医療従事者が直面する文書作成の負担を軽減するために設計されたのだという。先日ニューヨークで開催されたAutomation Anywhere(どこでも自動化)のイベントで、ベクテルと会う機会があったので、Allieの設計から導入までの経緯についての話を伺った。

ベクテルは、Allieのおかげで、医療従事者は管理負担を最大15%削減でき、より直接的に患者の対応に専念できるようになったという。「私たちはまず、機械学習、デスクトップ・オフィス・オートメーションを企業全体にスケールアウトするためのタスクフォースを立ち上げました。私たちは、自動化を従業員のためのイネーブラーとして捉えていましたが、よりパーソナルなやり取りができるようになりました」

ベクテルのチームが、自社の品質管理プロセスを分解して調べたところ、驚くべき発見をした。医療従事者の時間の80%が「患者との対話そのものよりも、ケアプランやカルテを通してのやりとりを文書化すること」に費やされていたのだ。

しかし、Allieや関連するAIや分析の知見を、一方的に用意して社員にそのまま与えたわけではないとベクテルは説明する。構築プロセスに、医療従事者が最初の段階から密接に関わったことが、Allieの成功の鍵だったのだ。「社内の事業部に行くと、いつだって医療従事者たちが『あなたは私の仕事をまるでわかっていません』というんです」と彼はいう。「その問題を克服するために、アイデア出しからデザイン、そして実装に至るまでの旅に、最初から関わってもらえるように、彼らを開発に巻き込んだのです」
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翻訳=酒匂寛

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