ペロシ自宅襲撃は氷山の一角、狙われる米女性公職者

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ボストンのミシェル・ウー市長は白人至上主義者の標的にされた。ワシントン州選出のプラミラ・ジャヤパル下院議員は自宅周辺で銃を持った男につきまとわれた。ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員は連日、数え切れないほどの脅迫を受けている。

米国の女性にとって、政治に携わることはますます危険なことになってきている。最近まとめられた全米規模のデータでも、地方の女性公職者は男性よりも脅迫や嫌がらせの被害に3倍以上遭いやすいことが明らかになった。

「上院議員や下院議員が殺されてもわたしは驚かないでしょう」。メーン州選出のスーザン・コリンズ下院議員はニューヨーク・タイムズにそう語っている。

プリンストン大学と名誉毀損防止同盟(ADL)がまとめたこのデータ(対象期間2020年1月〜2022年9月)によると、地方の政治家や公務員に対する脅迫や嫌がらせの42.5%は女性が被害者で、性別の比率は男性やノンバイナリーなどよりも高かった。地方の公職者に占める女性の割合を考慮すると、女性は男性よりもこうした被害を3.4倍受けやすいことがわかった。

先月末には、サンフランシスコにあるナンシー・ペロシ下院議長の自宅に武器を持った男が押し入り、ペロシの夫に暴行を加える事件もあった。男はペロシの膝頭を叩き割るつもりだったと供述しているという。

ADL過激主義研究センターのオレン・シーガルは「地方の公職者に対する脅迫や嫌がらせは米国の民主主義にとって重大な課題になっている」と警鐘を鳴らす。そのうえで、政策当局や地域コミュニティーに対して、今回のデータを活用しながら、より効果的な被害集計や対策を進めてほしいと訴えている。

プリンストン大とADLは今後、調査対象を州や連邦レベルにも広げることにしている。

中間選挙でも警戒


米国で政治絡みの脅迫や暴力は男性よりも女性のほうが受けやすいという傾向は、ほかにも多くのデータで裏づけられている。

センター・フォー・デモクラシー・アンド・テクノロジー(CDT)は先月末、公職に立候補した有色人種の女性はネット上で性差別や人種差別、暴力の脅しなどの被害に遭う率がとくに高いという調査結果を公表した。ラトガース大学アメリカ女性・政治研究センターも9月、市長選の立候補者を対象とした調査で、女性、なかでも有色人種の女性は、暴力や脅迫、嫌がらせに遭う率が懸念されるほど高いことを明らかにしている。

戦略対話研究所(ISD)による2020年議会選の調査でも、同様の結果が示されている。

国土安全保障省は6月に、中間選挙に向けて「国内の暴力的な過激主義者による民主制度や政治家候補、政党、選挙イベント、選挙関係者らを標的とした暴力の呼びかけ」が増えそうだと警告を発している。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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