最近のウェストミンスターは異常というほかない。まずボリス・ジョンソンが首相の座を追われ、後任のリズ・トラスもすぐ追い出された。そしてリシ・スナクの登板になった。彼が首相職に安定をもたらしてくれることを祈りたいが、結果はいずれわかるだろう。
それはさておき、駆け出しの起業家や企業の幹部は英政権の一連の騒動から学べることもあるだろう。
端的に言えば、それは「リーダーに必要な条件は何か」という問題だ。結論から言うと、それは一つしかないのだが、ほとんどの人はそれが何かに気づいていない。
企業や投資家の間では、リーダーを定義する特徴があれやこれやと挙げられる。「革新的」だとか「思いやりがある」とか、あるいは「起業家精神にあふれている」とか「先を読む力がある」とか、あるいは「勤勉」「熱意がある」といったものだ。
だが、そうした定義は実のところ風見鶏のようにころころ変わりがちだ。人事担当者はその時々に、あるいは場所に応じて、必ずポジティブとみなされるであろう新たな基準を考え出すのに、膨大なリソースを浪費している。
スターリンとチャーチル、ボリスの共通点とは?
これは誰にとっても時間の無駄だ。歴史を振り返ると、多くのリーダーは「嫌なやつ」であり、それでいて支持者もいたからだ。なかには邪悪とすら言える人物もいたが、支持者が加担していなければあれほど大きな道徳的犯罪がなされることもなかっただろう。共産主義の指導者であるヨシフ・スターリンの例を思い起こしてもいい。
一方で、悪に対して敢然と立ち向かったウィンストン・チャーチルはたしかに偉大なリーダーだったが、彼にしても支持者がいなければあのような偉大なことは成し遂げられなかっただろう。チャーチルには、今の人には眉をひそめられるようなところもいろいろあった。
いずれにせよ、リーダーに不可欠な要素はたった一つしかない。それは、フォロワー、つまりついてきてくれる人がいるということだ。人がついてこなくなったとたん、リーダーはリーダーでいられなくなるのだ。
たとえば、ボリスにもフォロワーがたくさんいた。だからこそ総選挙で保守党を勝利に導き、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)も乗り切ることができた。ところが、スキャンダルが起きて、必要としていたフォロワーが離れていくと、リーダーの座から転落することになった。
トラスもそうだ。彼女は党内で最も多くのフォロワーを得て首相の座を射止めたが、悪名高い例の「ミニ予算」のせいで、必要としていたフォロワーを失っていまい、やはりリーダーの地位を失うはめになった。
理解していただけただろうか。要するに、フォロワーのいない人は定義上、リーダーにはなれないということだ。これは、これからビジネスを始めようとしている人や、社内で出世したい人にとっても大事な教えだ。戦いの場についてきてくれる人がいれば、それはうまくできているということだし、成功するチャンスも高いだろう。反対に、一緒に道を渡ってきてくれなければ、それはたぶん何か問題があるということなのだ。
悲しいかな、この人にはついていきたくないというのは、会って数秒でわかってしまうものだ。
(forbes.com 原文)