2012年の設立時から同社に参画する瀧は、国内フィンテック市場が飛躍するきっかけになった18年施行の銀行法改正など多くの規制改革に関与。現在は内閣府の規制改革推進会議専門委員にも名を連ね、政府や銀行業界からの信頼も厚い。「この半年間は規制改革推進会議が仕事の4割ほどを占めてました」と話す。
強みのひとつが、海外のフィンテック政策動向に関する圧倒的な知見だ。マネーフォワードFintech研究所長として市場調査や情報発信も担う瀧は、「自分が見逃しているものがないか、死に物狂いで海外の情報を探しています」と屈託のない笑顔で話す。「昔はテック系メディアの記事はすべて目を通す苦行みたいなこともやっていました(笑)。海外の先進的な人たちの常識レベルから振り落とされないようにしないと」。
情報への探究心は、米ペイパル創業者で投資家のピーター・ティールによる影響が大きい。スタンフォード大学経営大学院へ留学中の11年、同大学で教壇に立っていたティールの授業を受けていたのだ。
「ピーターはインプットのレベルがすごい。課題図書として出されるのはテクノロジーだけでなく、分厚い歴史書やSF本など。それぐらい学ばないと世界では戦えないんだと衝撃でした」
また、スタンフォードで学んだ「パワー・オブ・オーセンティシティ(真実の心が生む力)」は、彼の活動を支えるバックボーンになっている。
「この40年の人生で手に入れた唯一の武器ですよ。自分に素直になって話すことが、リーダーシップや相手に理解してもらうことにつながる」
上っ面ではなく、本心で業界や社会のあるべき姿を語る。信頼に足る人物として声がかかるのはそのためだろう。そう伝えると、瀧はこう語った。
「信頼? 私にじゃないですよ。家計簿アプリを使ったりしてお金と向き合うってなかなか勇気のいる行為だと思うんです。そういうユーザーさんたちの声こそが僕らの活動の源泉で、それを伝えることが信頼につながるんです」