ビジネス

2022.11.11 08:30

最強企業GEが没落した本当の原因は何か?


ユニリーバのパーパス・ドリブン型ビジネスモデルへの改革


さらに踏み込んで社会的インパクトにコミットする方法もある。ステークホルダー主義やESGを自社のパーパス(事業の目的)に組み込んで、ビジネスモデルをパーパス・ドリブン型に変えるのである。ユニリーバの元CEOのポール・ポールマンが行ったユニリーバのビジネスモデル改革はその代表例だろう。

ポールマンがユニリーバのCEOに就任したのはリーマンショックによる金融危機の最中だった。ユニリーバの業績は10年近く低迷していた。これからのビジネスが貧困や格差、地球温暖化といった社会的な問題との関わりを抜きにして持続的な発展を続けることはもはや難しい。問題解決のためには、長期的視点に立ったビジネスに自社が変わる必要がある。そうした信念のもと、ポールマンはユニリーバのビジネスモデル変革に着手する。


Paul Polman / CEO of Unilever(Getty Images)

自社の歴史を掘り下げて、石けんによって人々の衛生を改善したユニリーバの原点を確認した上で、「サステナビリティを暮らしの“当たり前”に」を新パーパスとして設定した。さらに、パーパスを「絵に描いた餅」にしないために事業戦略に落とし込み、「ユニリーバ・サステイナブル・リビングプラン(USLP)」として公表する。自社と密接に関係する環境や格差などの社会的問題を特定し、その問題解決のために、目標と行動計画を具体的に示した。

短期的成果を求める株式市場に左右されないように、四半期決算の開示もやめた。この決定でユニリーバの株価は一時8%も下落したが方針は変えなかった。スキンケア、食品、トイレタリーなど多岐にわたる事業ポートフォリオの再編にも取り組んだ。利益を上げていてもパーパスに合わない事業は売却した。

これらパーパスドリブン型のビジネスモデル改革によって、ポールマンがCEOとして在任した2009年から2019年までの10年間でユニーリーバの株価は2.3倍になった。長期的視点で発展を目指すユニリーバの戦略を株主や市場も支持したのである。2021年には、企業のサステイナブルな取り組みを評価する「Food & Agriculture ベンチマーク 2021」において、ユニリーバは350社の中で一位を獲得している。

ポールマンによる一連の改革は、ステークホルダーの利益を大切にしながら、企業の持続的発展と社会課題の解決を両立させることが可能であることを示した。現在ユニリーバーは「USLP」を後継する経営戦略「ユニリーバ・コンパス」を発表し、パーパス・ドリブンのビジネスモデルをさらに進展させようとしている。

GE、ユニクロ、ユニリーバ。経営スタイルは三者三様である。企業の栄枯盛衰を決めるのは果たして何なのか。これらの企業の経営の舵取りにも注目しながら、見定めていきたい。

文=河野龍太

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