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2022.11.11 08:30

最強企業GEが没落した本当の原因は何か?


彼からCEOを引き継いだジェフリー・イメルトは、その負の遺産に悩まされた。稼ぎ頭だったGEキャピタルはリーマンショックの打撃をもろに受け、大量の不良資産を抱え込む。その結果、GEは深刻な経営危機に陥った。

ウォーレン・バフェットの出資や米国政府の救済措置によって、何とか倒産は免れたものの、ダメージは大きかった。イメルトはデジタル事業に注力することでGEを再生しようとした。しかし、結局、金融事業の代わりになるほどの成果は生み出せなかった。最後はアクティビスト株主の圧力をうけて退任に追い込まれる。イメルト後のCEOも短期間で交代を繰り返し、現在に至っている。

昨年の発表によれば、GEは2024年までに電力、医療機器、航空エンジンの3つの事業会社に分割され、それぞれの会社が株式を上場する計画である。アメリカきっての名門企業はあえなく解体となり個々に再起を期すことになった。

本書で明かされたGEの実態から浮かび上がるのは、社員の幸福や社会の利益を脇において、自社の利益と株価を追求することに囚われたジャック・ウェルチを始めとするGE経営層の姿だ。

GEを没落させた本当の原因とは何だったのか?


「利益の最大化」を至上とする経営観の源流をたどれば、経済学者のミルトン・フリードマンに行きあたる。フリードマンは、企業の責任は利益を最大化し株主に報いることに尽きる、と主張した。いわゆる「フリードマン・ドクトリン」である。

フリードマンが在籍したシカゴ大学で同じ頃に教授を務めていた経済学者の故・宇沢弘文氏は、フリードマンの思想をあらゆる物事を数値に置き換えて評価し人間性や社会性を切り捨てるものとして強く批判してきた。

ちなみに、宇沢弘文氏が提唱した「社会的共通資本」は、森林・空気・水などの自然環境、電力・ガスなどの社会的インフラ、医療・教育制度のことで、豊かな暮らしを守るためにこれらを市場原理と切り離して管理することを目指した理論である。現代のサステナブル社会の議論にも通じる先駆的な思想であり、今日再び日本や世界から注目を浴びているが、フリードマンの思想や価値観とは相容れない。

市場原理主義者のフリードマンへの批判、オルタナティブ(代案)というのが、「社会的共通資本」の出発点だったと宇沢氏は語っている。
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文=河野龍太

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