キャリア・教育

2022.11.20 11:00

和食とエルメスに行列するパリで「日本の手仕事」を伝えるには


5. 場所と時期の選び方


次のステップは、どこで、どの時期に発表するかの選択です。2021年9月に開催されたミラノサローネで現地を視察しましたが、まだその時期には集客は本調子ではなく、翌年もビジネスに直結するところまでは持って行けなさそうだと判断をしました。

また、コロナ禍で大型展示会が直前にキャンセルになるという状況がある中で、そのリスクのあるBtoBを軸とした合同展をフィールドにするのではなく、自分達で運営でき、テストマーケティングも可能な展示会方法を考えました。

その中で、パリ市内のギャラリーを会場に、パリファッションウィーク(パリコレ)の時期に開催すると定めました。この時期のパリは、世界中ののセレクトショップや有名百貨店のバイヤーが集まり、新しいブランドとの出会いを求めるバイヤーとのタッチポイントが見込めます。suzusanとしてもパリコレ期間中に出展しているので、来場したバイヤーを「Creation as DIALOGUE」会場に促すこともできると考えました。

今年3月のパリコレには、パンデミックで消えていた欧州以外のバイヤーも来場。夏になるにつれ、欧州全体で一気に移動が加速し、9月に向けて回復傾向が見られるように感じました。

仕上げは、会場選びです。このプロジェクトにふさわしい場所を考えパリで最も美しいアーケードと言われるギャラリーヴィヴィアンヌの中の場所に目星をつけました。



1823年に建てられ、現在はフランスの歴史的建造物に指定されているこのアーケードはギャラリーやブックショップ、ブティックなどが並び、世界の観光客を魅了しています。またここは、1970年に故高田賢三氏が日本人として初めてファッションブティックをパリにオープンした記念碑的な場所。そのバトンを引き継ぐ意味も込めて、この場所を選びました。

6. 情熱の伝え方


いよいよ展示に向けて最終の段階になってきたところで、最後に“伝え方”を考えました。どうすればプロダクトの素晴らしさや職人の情熱を海外の人々に知ってもらえるか。

僕は思い立ち、以前パリで一緒に仕事をした友人のMai Huaさんにコンタクトをしました。彼女はフランス生まれのベトナム人で、さまざまなラグジュアリーブランドの映像を手掛けるほか、近年では映像作家としての活動もして、映画も作っています。

彼女が名古屋という知らない場所に行き、初めて見る漆や七宝、染め物の技術を見たら、どんな風に感じるだろう。おそらくそれは、僕ら日本人が漆と聞いて受け取るものとは異なり、言葉の通じない地域で全く新しいものに触れた時の感動や体験があるだろうと思い、彼女に動画制作を依頼しました。
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文=村瀬弘行

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