よく眠る会社が勝つ 睡眠はもう個人だけの問題ではない

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その睡眠資本主義を実現するために、私は3つの働く仕組みが社会に実装される必要があると考えています。

1つ目はインターバル制度の義務化です。

過労死の防止対策として、厚生労働省は21年7月、25年までにインターバル制度を現在の普及率4.2%から15%に引き上げる目標を掲げました。また、岸田政権の新しい資本主義実行計画にも、政府の文章として初めて終業と始業の間を11時間空け、従業員の睡眠を確保することを義務づける「勤務間インターバル制度」という言葉が入りました。これは、睡眠を労働の仕組みとして確保できるのでとても有効な施策です。


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2つ目はフレックス勤務制度の普及です。

コアタイム以外は柔軟に労働時間を自分で決められる制度ですが、IT企業などを中心に普及は進んでいます。通勤ラッシュによる勤務負担の軽減やワークライフバランスの実現などだけでなく、睡眠の観点からいえば、夜型の従業員でも無理に早寝早起きする必要がないので、この制度が就業規則に組み込まれているだけでも大きな前進と言えます。

特にひと昔前に注目された「朝活」というのは、朝型・夜型のクロノタイプの観点から考えればまったくナンセンスであり、それぞれの適性にあわせた「多様性のある働き方の許容」が時代のトレンドになりつつあります。

3つ目は睡眠衛生リテラシーの普及です。

厚生労働省が2014年に睡眠指針12カ条を公開しましたが、認知度はまだまだです。起きている時や寝る前のどんな行動が睡眠の質を悪化させたり、または良くしたりするのかをビジネスパーソンの多くが理解していません。例えばどんなに高級な寝具を使っても、寝る前に暴飲暴食していたら脳と身体は休息できません。そうした事実を個々人が理解する必要があるでしょう。

この「睡眠資本主義」を実践する上で、私が特に強調したいのは、睡眠は個人で自己管理する時代から企業と社会で取り組む時代へ変化しているということです。睡眠の質が、起きている時間のパフォーマンスを変えるという事実に向き合い、企業が、従業員の睡眠を改善・向上させる仕組みをつくりあげていくことが必要なのです。

連載:「睡眠」をアップデート
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文=小林孝徳

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