生理の「経血量を測れるショーツ」プロトタイプ発表 疾患の早期発見に期待

お披露目された「経血量を測定できる吸水ショーツ」のプロトタイプ


これまで、女性が自分の経血量を数値で把握する術はなかった。広尾レディース院長で産婦人科医の宗田聡医師によると、一般的に1回の経血量が140mlを超えると過多月経とされるが、例えば診察の際に「経血量は多いですか?」と聞いたところで、その判断は本人の主観に頼るしかなかった。

「主観というのは、夜用のナプキンでも漏れないか、レバー状の経血はどれくらいあるか、などです。患者さんの話を聞いていると、多い日にはバスタオルを巻いて寝るという方も結構いて、そこまで多いと過多月経の疑いがあります。過多月経がみられると、貧血や婦人科系疾患の可能性が高くなります」


(左から)Be-A Japan代表取締役CEOの髙橋くみ、広尾レディース院長で産婦人科医の宗田聡医師、ミツフジの三寺歩社長

経血量に関しては、直近の調査データが15年前のものであるなど、あまり積極的に研究されてこなかった分野でもある。それは、命に関わる病気のケースが少ないことや、男性社会のなかで優先順位が低かったことなどが関係しているという。しかし、女性の社会進出が進むにつれて、生理をはじめとする婦人科系疾患に関する悩みや課題が明るみにでてきた。

こうした背景から、髙橋は吸水ショーツを使った経血量の把握を目指し、ミツフジの三寺歩社長に声をかけ、2021年3月ごろから共同開発がスタートした。 三寺は、話を聞いたときには「本当にこんな難しいことをやるのか」と驚いたという。ただ、その社会的意義に共感した。

「我々が、歩数や脈などの個人の身体のデータを連続的に知ることができるようになったのは最近です。ミツフジも心電図の連続データを計測していて、脳波との関係性を発見するなど、同じ人のデータを長期的にとる意義を感じていました。ですので、ベアさんから社会課題解決にもつながるテーマをいただいて、ぜひ取り組もうと考えました」


「経血量を測定できる吸水ショーツ」のプロトタイプ。腹部には取り外し可能なトランスミッターが付いている

フェムテック市場でも注目の分野


個人の「測定データ」は、フェムテック市場でも注目の分野だ。海外で母乳の量を計測するスタートアップが大規模調達をしたり、Apple Watch Series 8では皮膚温センサーが搭載され生理周期アプリで活用できたりといった動きもある。

「Z世代にとってはデータがあるのが当たり前。データで分析できないことのほうが信じられない社会になっていくと思います」(髙橋)

宗田医師も、それらのデータを医療分野で活用することでより個々人に合わせた治療が可能になるという。

「経血量を測定できる吸水ショーツ」は、年内には協定を結んでいる福島県川俣町でプロトタイプを使用した100人規模の実証実験を開始予定。その結果を踏まえた改良を経て、商品化を目指す。

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文=田中友梨

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