従業員のスキルギャップを埋める、アマゾンの新しいプロジェクト

(Photo by Suzanne Kreiter/The Boston Globe via Getty Images)

経営コンサルティング企業のコーン・フェリーがこのほど出した調査結果によると、2030年までに世界で8500万人以上の人材が不足し、年間約8兆5000億ドルの収益が失われる可能性があることがわかった。

コーン・フェリーのグローバル・インダストリアルマーケット・プラクティス部門のプレジデントを務めるヤニック・ビンヴェル(Yannick Binvel)は、以下のように指摘する。「政府や企業などの組織は、人材戦略を重要な優先事項とし、既存の労働力を教育、訓練、スキルアップするための手段を今すぐ講じる必要がある」

人事マネジメント・コンサルティング会社のマーサーによると、スキルギャップを解消するには次のような方法がある。

1. スキルギャップを特定し、それに従ってスキルアップ/再教育をカスタマイズして、学習すべき内容を絞る。

2. 講座を受講し資格を取得した従業員に費用補填をすることで、スキル習得に報酬を与える。

3. ローテーション、短期プロジェクト、社内業務などを利用して、体験を通した学習を促進する。

4. 必要なスキルや経験を持つ人材を新たに採用することで、スキルを買う。

5. 買収や合併によってスキルを獲得する。

マーサーはさらに、パンデミックを機会に、多くの企業が再教育を行なったことも明らかにしている。世界の企業は2021年、学習者1人当たり平均2800米ドル以上を再教育に投資した。この額は、2020年と比べると50%増加している。それでも、企業の人事担当やリスク担当責任者たちは、「スキルが時代遅れになること」を、企業リスクのトップ10に挙げている。

「自分の会社は、適切なトレーニングを提供している」と答える従業員の数は、2021年と比べて減少している。さらに、世界人口の76%が、「デジタルファーストの世界で働く準備ができていない」と認定されているなかで、テクノロジー産業の職業は、今後10年間で全国平均の2倍の速度で成長すると予測されており、参入に向けての新しい道を作ることが必須となる。

NTUCラーニング・ハブのリポート「職場における学習の現状(State of Workplace Learning:略称SWL)」によると、従業員が職場で提供されるトレーニングについて不適切だと考える理由には、「研修に対するアプローチが旧式で、退屈だ」(31%)、「扱うトピックが限られている」(23%)などが挙げられている。また、燃え尽き症候群に対する認識は高まっているものの、ワークライフバランスやウェルビーイングに焦点を当てた管理職向けトレーニングが優先されているという回答は25%にとどまっている。

こうした状況のなかでアマゾンは、スプリングボード・フォー・ビジネス(Springboard for Business)との提携により、カスタマイズされたプログラムを通じて、労働市場とスキルギャップの問題を解決しようとしている。スキルアップと再教育を提供するこのプログラムは、各企業や状況に応じた学習を通じてビジネス・インパクトを強化することを目標にしている。

スプリングボードは、「アマゾン・キャリア・チョイス(Amazon Career Choice)」向けのキャリア・パスウェイ・プロバイダーとして、時間給で働くアマゾン従業員に向けて、データ分析やソフトウェアエンジニアリングといった、高成長で需要の高いキャリアに移行しやすい、カスタマイズされたプログラムを提供する計画だ。
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翻訳=ガリレオ

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