実際は、そんなことはなかった。ベゾスは、コンピュータによるショッピングを可能にしようとする会社が、ショッピングセンターに取って代わることはないと明言していた。ショッピングセンターのコミュニティは、決してその輝きを失うことはないし、また、実店舗での買い物には明らかに即時性があり、それがインターネットの隆盛と実際の店舗での買い物の消滅が同時でない理由にもなっている。
ベゾス自身がずっと以前に彼自身がいったことを信じていたのは明らかだ。その証拠に、ベゾスのもとで、アマゾンの実店舗は成長を続けている。さらなる根拠は、アマゾンが追求し続けているクイックデリバリーだ。
アマゾンの顧客は知っているように、アマゾンのウェブサイトでの注文は、以前は2、3日が当たり前だったのが、数時間、1日という単位で完了するようになってきている。アマゾンが、(実店舗の人気を見ればわかる)顧客が求める即時性を提供できれば、実店舗で高い即時性を提供する企業との競争に勝てるようになる。顧客が望むものを提供しようとした結果、アマゾンは倉庫を増やし、Wall Street Journalのクリストファー・ウィーヴァーによれば「全米の高速道路で商品を移動させる広大なネットワークを急速に構築した」のだそうだ。
ウィーヴァーが描写することはすばらしい。利益をめぐる競争は、オンライン小売業者も実店舗も同様に、より良いサービスを提供することを意味する。そこには何の独創性もない。ただし、アマゾンが(アマゾンの本社がある)シアトルを比喩的な意味で顧客に近づけようとする努力には、トレードオフがともなうとウィーヴァーは主張する。ウィーヴァーによれば「アマゾンが運転するために雇ったトラック運送会社の多くは、同業他社よりも危険であり、ときには命の危険もある」のだという。
読者は、ウィーヴァーの主張を容易に察知できるだろう。この記者がいいたいのは、アマゾンが利益を追求するあまり、手を抜いたということだ。そして、その手抜きによって、アマゾンは外部性を生み出した。正確には致命的な外部性である。
この主張はなかなか聞き入れられない。その大きな理由は、アマゾンが命を与え、アマゾンに命を与えているインターネットと関係がある。ポケットにパソコンを入れて持ち歩く人が多い世界では、良い情報も悪い情報も瞬時に手に入る。ウィーヴァーは、アマゾンがその名を汚すようなことをすると本当に思っているのだろうか。しかも、その評判は非常に良い。