気候変動対策のためのパートナーシップ
「連携」による気候変動対策の成功例はすでに数多くあります。
昨秋のCOP26で、世界経済フォーラムの「ファースト・ムーバーズ・コアリション」(削減が困難なセクターの企業で構成)が発足。メンバーであるパートナーは、史上初、化石燃料を使わない鉄鋼を展示しました。その後、世界で初めて化石燃料フリー鉄鋼で製造されたトラックが完成し、他のパートナーも航空機からアルミニウムに至るまで、脱炭素化の公約の実現に向けて前進しています。
世界経済フォーラムは、業界の枠を超えたビジネスリーダーたちによるハイレベルなプラットフォームとして「CEO気候リーダー・アライアンス・インド」を立ち上げ、複数のステークホルダーとのパートナーシップと、企業のリーダーシップ、集団行動を活用した具体的な計画を通じて、気候変動に関する野心を行動に移すことを目指しています。
アフリカでは、世界経済フォーラムのプラットフォーム「グローバル・プラスチック・アクション・パートナーシップ(GPAP)」を通じ、ガーナ、ナイジェリア、南アフリカの各国政府と当フォーラムが連携してプラスチック汚染対策を進めています。その一例として、ガーナでは海や水路のプラスチック流出ゼロを目指しています。
COP26は、高所得国が低・中所得国に対し、2025年以降に地域社会が気候変動により受ける影響から自衛するための適応資金として、年間400億ドルを約束しました。
COP27、気候変動への適応が焦点
これを受け、議長国であるエジプトは、エネルギー転換などの気候変動の緩和策のみならず、食料と水の安全保障などの「適応策」にも等しく重点を置くと予想されます。
世界平均の2倍の速度で温暖化が進み、異常気象に対して非常に脆弱である中東・北アフリカ(MENA)地域において、食料と水の安全保障は喫緊の課題です。
ウクライナ侵攻により世界の食料供給網が寸断され、同地域の干ばつが農業生産に打撃を与える中、食料不安による影響は深刻化しています。
中東・北アフリカ地域で、低炭素技術やインフラ整備の拡大に取り組むハイレベルな官民リーダーによるコミュニティ「持続可能なMENAリーダー」は、気候変動対策として、3つの優先分野を挙げています。それは、「公正かつ包括的なエネルギー転換」、「レジリエントな食料・水のシステム」そして「環境に優しい建築環境を引き出すイノベーション」です。
しかし、これらの優先課題に取り組むために不可欠なのは、資金不足の解消とネットゼロ目標に対する企業の意欲向上であると、同コミュニティは強調しています。
COP27を「団結を示す機会」へ
COP27を前に、エジプトのシシ大統領は「協調と効果的な実行によってのみ克服できる、存続をかけた危機に対して、COP27は団結を示す機会になると、私は深く信じています」と述べています。
世界経済フォーラムは、すべての人にとってより良い、クリーンでサステナブルな世界を官民連携で築くことができるという考えに賛同します。COP27は、パートナーシップを構築する絶好の機会であり、私たちはこれを活用していく必要があります。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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