内定が決まると、その朗報をオープンにし、報酬の大幅アップ、ストックオプション、いい肩書きを得たことを興奮気味に同僚に話す。
そして雪だるま効果が発生する。他の従業員はすでに「クワイエットクイッティング(必要最低限の仕事しかしないこと)」と大量退職の傾向に気づいており、転職が活発に行われていることを認知している。残った従業員は「なぜ自分はまだこの会社にいるのだろう」と自己反省をする。
そして会社のあらゆる問題を分析し上司が意地悪でマイクロマネジャーであること、成長・昇進の道がないこと、概して自身が過小評価され、やる気をなくしていることを認識する。
部署内の従業員が履歴書やLinkedIn(リンクトイン)のプロフィールを更新し、積極的に職探しを始めるのは時間の問題だ。
1人辞めれば、他の従業員も逃げ出す
人材派遣・紹介をグローバル展開しているAdecco(アデコ)がブルーカラーとホワイトカラーの労働者を対象に行った大規模な調査で、労働者の25%以上が今後12カ月の間に転職を考えていることがわかった。また、約45%の人がすでに転職活動中で、積極的に面接を受けていることも明らかになった。
調査対象の労働者の約半数は、同僚が辞表を出すのを見て転職活動を始めたと回答しており、同僚の退職を見た人の70%が自分も転職を考えたことがあると答えている。
Adeccoが発表した「Global Workforce of The Future Report 2022」には25カ国3万4200人のデスクワークと非デスクワークの労働者が調査に協力し、「クイットフルエンサー」現象のリスクに最もさらされている国はオーストラリア、スイス、東欧、中東、北アフリカであることが示されている。また、世代別ではZ世代はクイットフルエンサーの影響を受けて辞める可能性がベビーブーマー世代の2.5倍であることがわかっている。
経営者がすべきこと
企業のトップは迅速かつ断固とした従業員中心の行動を取らなければ、最も優秀な人材を失うリスクを負うことになる。通常、最初に辞めたクイットフルエンサーや続けて辞めた人は、組織内の「A」プレーヤーだ。これらのプロフェッショナルは競合他社が強く求めている急成長中のスターだ。リクルーターはこうしたトップクラスの人材に狙いを定め、常に転職を勧誘している。