インフレ削減法の成立で、石炭発電依存からの脱却は進むか
バークシャー・ハサウェイ・エナジーは、ウェストバージニア州独特の政治的な障壁があるなかで、いかにして「石炭の罠」を脱したのだろうか?
ウェストバージニア大学法学部教授で、同大学のエネルギー・持続可能開発センター所長を務めるジェームス・バン=ノストランド(James Van Nostrand)によれば、このプロジェクトはマイクログリッドのように機能する。施設で太陽光発電を行い、生まれた電力をバッテリーに貯蔵し、地域に特化した小規模送電網を通じて利用者に届けるというのだ。
今のところは、バークシャー傘下の航空宇宙企業で、ウェストバージニア州に事業を拡大したプレシジョン・キャストパーツ/タイメットが主要顧客となる。バークシャーはその巧みな交渉力を用いて、ウェストバージニア州公益事業委員会の審議対象となることを回避した。
ウェストバージニア州のメトロニュースは、バークシャー・ハサウェイ・エナジーの再生可能エネルギー部門を率いるアリシア・クナップ(Alicia Knapp)が、「これは始まりにすぎない」と発言したことを伝えている。
ソーラー発電は、全米に広がっている。カリフォルニア、フロリダ、テキサスの3州ではかなりのシェアを確保し、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューヨークの3州でも成功を収めている。これは価格低下の結果でもあり、全米で太陽光エネルギーを取引する市場も成長している。
連邦政府による26%の投資税額控除も、この動きを後押ししている。しかもインフレ削減法の成立により、この控除の対象は拡大され、今では原子力、水素、炭素捕捉および貯蔵を含む、全てのカーボンフリープロジェクトで利用可能となっている。
コンサルティング会社のウッド・マッケンジーによると、ウェストバージニア州に現時点で設置されている太陽光発電設備の規模は18メガワット相当で、これは全米で下から数えて3位にあたるという。
前に紹介したウェストバージニア大学の研究者バン=ノストランドは、「ウェストバージニア州では、エネルギーシフトはまだ始まっていない。だが、勇気づけられる兆候はいくつかあり、インフレ削減法が大きなきっかけになるだろう」と述べる(なお、同氏は共和党を支持している)。
「一番の問題は、この州の公益事業委員会が石炭産業の支配下にあることだ。そのため、消費者が高いコストのツケを払わされている。さらに同委員会は、雇用主となる企業が、この州に拠点を置くことの障壁にもなっている。送電網が相互接続されたことで、今ではよその州からクリーンエネルギーを買うことができる。地球を救うためには、石炭からの転換が必要だ。そうすれば、電気料金の値下げにもつながるだろう」
(forbes.com 原文)