総額5億ドルにのぼるこのプロジェクトは、同様の事業を引き寄せる呼び水となり、同州の経済およびエネルギー基盤の多様化に一役買う可能性がある。
また、同じくバークシャー傘下で、米国の西部6州に電力を供給するパシフィコープ(PacifiCorp)は、1345メガワット相当の新たな風力および太陽光発電施設と、これに併設(コロケーション)される600メガワット相当のエネルギー貯蔵施設が今後6年間で必要になるとしている。これにより2030年までに温室効果ガスを、2005年のレベルから74%削減できるという。
さらに同社の計画には、テラパワーが開発した小型モジュール炉(Small Modular Reactor:SMR)と呼ばれる、次世代原子炉を用いた発電プロジェクトも含まれており、これが、廃止が予定されている石炭火力発電所に取って代わることになる。
パシフィコープは2037年までに石炭火力発電所を全廃する計画で、うち2基については、天然ガスを使った発電所に転換する。ワシントン州のクリーンエネルギー転換法(Clean Energy Transformation Act:CETA)では、2025年までの石炭発電の全廃と、2045年までの脱炭素化を義務づけている。
全米で見ると、石炭産業はその影響力を失いつつある。しかしウェストバージニア州では、この業界の持つ力はまだ衰えていない。税基盤として州の財政に貢献しているほか、州内の2万9674人分の雇用を支えており、大規模とは言えないが影響力のある集団なのだ。
ただし、石炭発電に本来かかるべきコストは「外部化」されており、電力価格に反映されていない。つまり、環境や医療関連の経費が、納税者の負担になっているということだ。たとえば、閉山された炭鉱の保全には数十億ドル単位の費用がかかるだろう。
一方、カリフォルニア大学バークレー校の研究によれば、米国は、料金を上げることなく、2030年までに発電量全体の80%を再生可能エネルギーでまかなえるという。また、2021年に稼働を開始した発電施設を見ると、総発電量2万8000メガワットのうち、風力が占める割合が41%、太陽光が36%、天然ガスが約20%となっている。電力会社は、政治的な理由ではなく、経済的な理由から、再生可能エネルギーを採用する判断に踏み切っているのだ。