2年にわたり不安定な時期が続き、健康や雇用の確保の面で不安な時期を過ごした小売分野の多くの労働者は、積極的に採用が進む市場状況を利用して転職先を見つけることに決めたのだ。
世界で採用中の小売分野の求人数が前年と比べ174%増えていることを考えれば、従業員を集めることが小売業界の経営陣にとって夜も眠れないほど大きな悩みの種であることは不思議ではない。
コンサルティング大手アクセンチュアの最近の調査からは、小売業者の圧倒的大多数が小売の仕事の魅力を上げるべく、労働者の福利厚生の改善や支援技術への投資、給与の改善、取引的な活動の削減に注力していることが示された。
これらは全て価値のある戦略だが、それでも小売分野の役員の約3分の1は労働者の士気が低いままだと考えていて、10人中9人近くは離職率について懸念している。より抜本的な見直しが必要なのは明らかだ。
まず必要なのは、従業員と雇用主の関係が変化したことを認めることだ。小売分野で働いてくれそうな労働者の意欲をかき立てるものは福利厚生だけではない。労働者は、やりがいや個人的な充実感、個人の主体性や信頼に基づいた関係など、より根本的なものを求めている。
これを実現する一つの方法は「オムニコネクティッド(全てがつながった)」な職場を作ることだ。これは、働く人が同僚やリーダー、仕事にもっとつながりを感じられる環境を作ることを意味している。
オムニコネクティッドな職場には安全や平等の文化があり、人は仕事で自分らしく振る舞ってもよいと感じることができる。こうした場では、自分の意見を聞いてもらえると確信し、学びや成長、新たな課題、キャリアアップに取り組める。
先述の調査によると、仕事で現在オムニコネクティッドに感じている従業員は8人中わずか約1人だ。しかし、それを変えるために小売分野の経営者にできることはいくつかある。
1つ目はリーダーシップだ。
オムニコネクティッドな職場では、小売分野の経営者が共感や透明性、信頼を全ての従業員に対して示し、誰もが安全で尊重され、意見を共有できると感じるようにしなければならない。
ここで重要なのは、リーダーが従業員の声を聞き、従業員から学ぶ新たな方法を見つけることだ。例えば職場のソーシャルコミュニティーやリバースメンタリング、管理職の円卓会議など、あまり一般的ではない経路があるかもしれない。
また上級管理職は、従業員の満足度や体験を中心として管理業務を改めることを目指すべきかもしれない。そのためには例えば、従業員の満足度や体験を測定・改善するよう管理職に働きかけることができる。