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2022.10.16 13:30

チェルノブイリの放射能でカエルが黒くなる

イースタンツリーフロッグの皮膚色の対比。チェルノブイリの高汚染区域内で捕獲した個体(左)、汚染区域外で捕獲した個体(右)(クレジット:Germán Orizaola/Pablo Burraco, CC BY)


「暗い色は、遊離基を無効化することでさまざまな放射線源に対する保護能力を持ち、DNA損傷を減少させることが知られており、特にメラニン色素はイオン化放射線に対する緩衝機構として提唱されている」と著者らが最近の論文に書いている(参照)。
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この最新研究によると、実際に黒い皮膚は、カエルを組織、細胞およびDNAの損傷から守り、生存確率を高めるための適応反応の結果かもしれない。これに対応して、皮膚の最も黒いカエルは、事故が起きた時に放射能汚染が最大だった爆発域の最も近くにいたことを研究チームは発見した(図3)。


図3:イースタン・ツリー・フロッグ(学名:Hyla orientalis)オスの背面皮膚の輝度と、(a)歴史的に放射線濃度の高い地域(1986年5月のセシウム137レベル>3700 kBq/m2)、および(b)チェルノブイリ排他区内で捕獲された個体の総線量。出典:doi:10.1111/eva.13476

黒い着色が現在カエルが暴露されている放射能汚染のレベルとは相関がないことを著者らは指摘している(汚染レベルは現在個体ごとに測定が可能)。黒い色は、カエルが事故当時に最も汚染されていた地域の中あるいは近くにいたことを示す特徴となっている。
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「皮膚の色は、事故当時に放射能レベルが高かった地域に近い場所ほど黒く、現在の放射能レベルはチェルノブイリのツリーフロッグの皮膚色に影響を与えていないと考えられる」と著者らは論文に書いている(参照)。

黒い着色は放射能汚染による遺伝子変異の結果ではなく、事故当時皮膚が黒かったカエルたち(通常は個体集団の中で少数派)がメラニンの保護効果のために長く生き延びているためかもしれない。当然ながら、最も長く生き延びたカエルは、繁殖してその有利な適応力を子どもに引き継ぐ可能性が高い。事故以来、カエルたちは10世代以上生まれ変わっていることから、現在チェルノブイリ排他区の中で黒いカエルが優占種である理由は、非常に早い自然選択プロセス(放射能が緑色のカエルを殺す)で説明できることを示唆している。


ウクライナ、チェルノブイリの原子炉1~4。左には第4原子炉の残骸と初期の石棺を覆う新安全閉じ込め構造物が見える(クレジット:Francisco Goncalves、Getty Images)


不幸なことに、論文著者チームもチェルノブイリ排他区で野生動物を研究している同僚たちも、プーチンの違法なウクライナ侵攻のために今は現地を訪れることができない。

原典:Pablo Burraco and Germán Orizaola (2022). Ionizing radiation and melanism in Chornobyl tree frogs, Evolutionary Applications 15(9):1469-1479 | doi:10.1111/eva.13476

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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