キャリア・教育

2022.10.11 08:30

重要なのは「多様な人材」よりも「多様性のある人材」だ


いくつかの国や大陸を経験し、それ以上の価値観や考え方を理解している人は、組織のよき相談役にもなれるし、仲介者にもなれる。特定の価値観を持った者同士の議論においても、両方の気持ちがわかったうえで、論点を整理できる存在は非常に貴重である。組織にこういう人材が増えてくると、2歩目としてバックグラウンドや国籍が異なる多様な人材を組織に入れることができるようになってくる。

もちろん、国籍だけにあてはまる話ではない。

育児も介護も経験した人は、多様性の許容度が高いし、受け入れられる価値観も広くなる。純粋な20代と50代のミックスのチームよりも、多様な年齢の人と働いたことのある20代と50代がいるチームのほうがうまくいく可能性は高い。全く異なる人だけれども、価値観の許容度が広い人をどれだけ組織に入れられるかが、リーダーと組織にとって重要になってくる。


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私の上司は、オランダ人で、イギリスとオーストラリアに駐在した経験があり、今、日本にいる。これだけ異なる国や文化を経験をしていると、大抵の価値観を受け入れる力を持っているし、その上で自分の考え方を形成しているのでとても説得力がある。そして、そういう人の下では、なんらか強い価値観をもっている者同士が、健全な衝突を乗り越えてうまく仕事ができるチームができやすいと実感している。

「働いたことのある場所」という切り口でダイバーシティレベルをつけると、以下のようになるだろう。

1. 特定の国や地域での経験がある
2. 複数の国や地域での経験がある
3. 複数の国や地域を束ねる機能、分野やエリアでの経験がある
4. 複数の大陸での経験がある
5. 全ての大陸を束ねる機能、分野やエリアでの経験がある

私自身は国を超えて仕事をしたことはあるが、大陸を超えての経験はない。自分よりダイバーシティーレベルの高い人に学ぶのも、自分のダイバーシティーレベルをあげ、組織作りに影響を与える大きな力になる。

「多様性のある人材の採用」こそがインクルーシブな組織作りの第一歩なのである。

文=西野雄介

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