中国客が「買い物代」のトップを維持していることも事実だが、ここから推察できるのは、単純にモノ消費からコト消費へ重点が移ったわけではなく、「モノ消費を内包したコト消費」へと発展しているということである。
例えば、お目当てのブランド化粧品を小売店で買いまわることを「モノ消費」とした場合。百貨店やブランド路面店で美容部員からカウンセリングを受けたり、エステサービスを受けながら商品選びをする、といった行動が「モノ消費を内包したコト消費」といえる。
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こうした購買行動は、単純なモノ消費に比べて顧客の満足度が上がり、客単価が上昇することが多い。それに留まらず、企業にとってもそのブランドのもつ世界観や商品の魅力や機能性を体験し理解してもらったうえで販売できるため、顧客と販売者の双方にとってメリットがある。
化粧品に限らず、日本ブランドがグローバル市場で勝ち抜くうえでは、このような体験価値の提供を含めた消費を促すことが非常に重要だ。高価なサービスにもお金を出す余裕があって、価値を受け入れてもらいやすい富裕層や各国の上流層を主要ターゲットとしてビジネス展開を検討していくことが、今後求められるのではないかと私は考えている。
中国で活況呈す、日本IPとのコラボ
「モノ消費を内包したコト消費」の訴求は、高級サービスだけができる打ち手ではない。各企業が、訪日したからこそ得られる体験や商品を提供することで、日本が旅先として選ばれる「差別化要素」にもなりえる。
日本限定商品の展開やアニメ、ゲームキャラクターなどIPとのコラボレーションなど、“日本限定感”を切り口にしていくことも有効だ。
実はこうした日本のコンテンツとのタイアップは、中国市場において現地企業が積極的に展開している。
例えば中国のメイクアップブランド「COLORKEY(カラーキー)」。同社は2021年10月に「ピカチュウ」とタイアップしたリップグロスを発表。イメージキャラクターを務める人気女優の「迪丽热巴(ディリラバ)」効果もあり、2021年のダブルイレブン商戦で好調な売り上げ実績を残した。また「ハローキティ」などともコラボし、可愛い物好きのZ世代を取り込んでいる。
ポケモンについては、中国のケンタッキーフライドチキンも2022年にタイアップ企画を実施。特に「コダック」の動きがかわいいと話題になり、抖音(Douyin)などで人気を博した。
さらに8月には中国の自動車ブランド「長城汽車(ちょうじょうきしゃ)」がモーターショーで、「エヴァンゲリオン」とタイアップした特別モデルを発表。同アニメのファンが多い20代から30代のアクティブ層をターゲットにしていると考えられる。
同じくエヴァンゲリオンとタイアップしているのがパソコンブランド「ASUS(エイスース)」。「エヴァンゲリオンモデル」のUSBメモリを2022年5月に発表するなど、アニメファンをターゲットにしたマーケティングを行っている。
課題は「縦割り組織の壁」
では今後のインバウンド商戦にむけて、日本企業が準備すべきことは何か。