コロナ禍でニーズが増大したのが、マスクなどで顔の一部が隠れていても高い精度で本人確認ができる技術だ。NECの顔認証では、マスクを着けていてもその精度は99.9%。企業の入退館管理や、スポーツイベントでマスクをしていない観客を検知する実証実験も行われている。
顔決済でパスワードから解放される
NECの生体認証技術は、国内外へ急速に広まっている最中だ。たとえば、顔認証を活用した空港での搭乗手続きや銀行の本人確認。顔、指紋、虹彩認証を組み合わせたインドやベトナムの国民IDにもこの技術が使われている。
もう一つ、話題を呼んでいる技術が、顔認証による決済、いわば「顔決済」だ。顔の情報がクレジットカードや銀行口座とひも付き、手ぶらで買い物ができるというもので、国内のバスやホテルで既に実証実験が始まっている。
また10月からは、愛知県の海陽学園海陽中等教育学校で、教育機関としては初の商用事例での提供が決まった。売店などで、店員が商品を読み取った後、端末の前に立つことで顔決済ができるという。同部の菊池雅也氏は利便性をこう説明する。
「買い物をする時に財布からポイントカードを出して、次にクレジットカードを出してパスワードを入力して、と煩雑なステップを踏むことなく、顔を見せるだけでポイント登録から決済まで済ませられる。現代はたくさんのパスワードを管理する必要がありますが、生体認証で一括管理が可能になります」
声や掌紋、耳音響、指動脈といった多様な生体認証技術を使い分けることで、作業現場での安全性、サービスの利便性や公平性などに広く貢献できるという。また、観光やサービス分野など、マーケティングへの活用も見込まれている。私たちの暮らしの安全を守り、生活のさまざまなシーンで利便性をさらに高めてくれるだろう。