テクノロジー

2022.09.18 13:00

ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた「夜空で最も美しい天体」

ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡のNIRCam装置が見たオリオン星雲の内部領域(クレジット:NASA, ESA, CSA、データ解析:PDRS4ALL ERSチーム、グラフィック処理:S. FUENMAYOR)

ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡のNIRCam装置が見たオリオン星雲の内部領域(クレジット:NASA, ESA, CSA、データ解析:PDRS4ALL ERSチーム、グラフィック処理:S. FUENMAYOR)

それは夜空に肉眼で見ることのできる最も驚くべき景色の1つだ。そして今、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が画像化した。
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オリオン大星雲、別名M42は新しく生まれた星の住処、すなわち星のゆりかごともいわれている。そこはこのような領域として宇宙で私たちに最も近く、もしかすると、私たちの恒星である太陽が40~50億年前に作られた場所かもしれない。

およそ1300光年の彼方にある拡散されたガスと塵の雲であるこの最も明るい星雲は、オリオンのベルトにぶら下がる「オリオンの剣」の一部をなしている。

9月12日に公開されたその画像は、美しく複雑でありながら、あまりにもシンプルな、星の光に熱せられている場所だ。
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掲載した画像は、JWSTのNIRCam(近赤外線カメラ)装置のフィルターを使ってイオン化ガス、炭化水素、分子ガス、塵および散乱した星の光の反射光の異なる波長を分離、合成して作られた。

本記事上部に掲載した画像にはオリオン・バーが見えている。それは近くにあるトラペジウム星団の若き巨大な星たち(画像からわずかに外れている)に照らされた濃密なガスと塵の稜線だ。

オリオン星雲(コメントつき)
ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡のNIRCam装置が見たオリオン星雲の内部領域(クレジット:NASA、ESA、CSA。データ解析:PDRS4ALL ERSチーム。グラフィック処理:S. FUENMAYORとO. BERNÉ)
 
巨大な若き恒星の紫外線(UV)放射を受けた(もっと簡単にいえば、星の光で熱せられた)宇宙の領域を、天文学者たちは光解離領域(PDR)と呼んでいる。

PDRは強い関心の的であり、なぜならそこは恒星や惑星がどのように作られたかのヒントを探す絶好の場所だからだ。

メイン画像は、以下の4つの驚くべき宇宙の景色を見ることができる(上の画像に注釈がつけられている)。

・繭(まゆ)の中にいる星の赤ちゃん(上右):惑星になろうとしているかもしれないHST-10と呼ばれる若い星の周りのガスと塵の円盤

・フィラメント(下右):炭化水素分子に富む曲がりくねったフィラメントで、画像では分子状水素がほとんどを占めている

・シータ2・オリオニス(θ2 Orionis A)(中央):多重連星系の1つで、その光が下から塵を照らしている

・小球の中の赤ちゃん星(中央左):重力的に不安定なガスと塵の雲が、輝ける核融合炉になる前にゆっくりと成長する「胚」に衝突して吸い込まれていく

JWST vs ハッブル
オリオン星雲:JWST(右) vs ハッブル宇宙望遠鏡(HST)(左)(クレジット:NASA、ESA、CSA、PDRS4ALL ERSチーム。画像処理:OLIVIER BERNÉ。HST画像のクレジット:NASA/STSCI/RICE UNIV./C.O’DELL ET AL. – PROGRAM ID: PRC95-45A.)

画像はすべて、Photo-Dissociation Regions For All Early Science Release (PDRs4All ERS)チームが作成した。人類史上最も進化した望遠鏡を使って、熱くイオン化されたこれらの環境を研究する学者集団だ。
--{オリオンの剣}--
以前ハッブル宇宙望遠鏡が捕らえたこの領域の画像と比較しているのに加えて、先週PDRs4All チームはハワイ島のW・M・ケック天文台を使用してオリオン・バーを撮影した。

ケック天文台の画像と、ハッブルの画像を以下に比較する。
ケック天文台
左:ハッブル宇宙望遠鏡によるオリオン・バーのモザイク画像(クレジット:NASA/STScI/Rice Univ./C.O’Dell et al.)右:ケック天文台のNIRC2カメラが暴いた原始惑星体などの下部構造(クレジット:Habart et al./W. M. Keck Observatory)

ハワイのW・M・ケック天文台を使用したジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)のチームは、オリオンの剣(詳しくはオリオン・バー)の領域が、若い巨大な恒星から強烈な放射を浴びせられているところの、これまでで最も詳細な赤外線画像をマウナ・ケア山から撮影した。

「光解離領域(PDR)の観察はまるで私たちの過去を見ているようです」とパリ・サクレ大学宇宙天体物理学研究所准教授で、本研究の論文の主著者であるエミリー・ハバートは言った。「これらの領域が重要なのは、若い恒星が生まれた場所のガスや塵にどのように影響を与えたか理解するために役立つからです。特に太陽のような恒星が形成される部分に」

上の画像(右側)は、読者がここで見ているJWST画像をチームが準備するのに役立った。

ボーナスとしてPDRs4All ERSチームはさらに、驚くべきフィラメントを再び見せているオリオン星雲北部領域の信じられないほど美しい画像も公開してくれた。
ボーナス
オリオン・バー観測中にNIRCamの検知器Aで観察したM42の北部領域( クレジット:NASA, ESA, CSA、データ解析:PDRS4ALL ERSチーム、グラフィック処理:S. FUENMAYOR)

オリオン星雲は、夜が明ける1時間前に起きて東の空を見上げれば、肉眼でも見ることができる。オリオン座の「狩人」の中だ。

それは拡散した光のぼんやりした斑点のように見え、赤い星ベテルギウスと、青い星リゲルの間に位置するオリオンのベルトの3つの星であるアルニタク、アルニナム、ミンタカのすぐそばにある。肉眼でも見ることはできるが、オリオン星雲を一番よく見るには、双眼鏡か小型の望遠鏡があるとよい。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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