国務省の公電などから得た情報を分析した結果として公表されたところによると、ロシアは今後、さらに多くの資金を各国の政治家などに送る計画だ。米当局がどのようにして「3億ドル」という金額を割り出したのか、実際にロシアがどの国を標的としていたのかについては、明示されていない。
だが、ロシアの政府関係者は欧州や中米、アジア、中東にある企業やシンクタンクを通じて、あるいは実在しない契約やシェルカンパニーを通じて、密かに資金を送っていたとされる。アジアのある国では、駐在するロシア大使がその国の大統領候補に現金数百万ドルを渡していたという。
こうした影響工作の一部には、ロシアの政治家アレクサンドル・ババコフと、オリガルヒ(新興財閥)のエフゲニー・プリゴジンが関与している。2人はいずれも、米国の政治に干渉したとして、米連邦検察に起訴されている。
プリゴジンは、2016年の米大統領選に影響を与えようとしたロシアのトロール・ファーム(偽情報を拡散させる組織)、「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」に出資していることで知られる。
また、ウクライナやシリア、アフリカの数カ国に傭兵を送り込み、各国の政府とも密接な関係を築いているとされるロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」にも出資しているという(プリゴジンとロシア政府はともに、ワグネルとの関係を否定している)。
米国務省の報道官のひとりは、「ロシアの隠れた政治的影響力は、米国と世界中の民主主義国家にとって、大きな問題だ」と述べている。同省のネッド・プライス報道官は、他国の選挙に干渉しようとするロシアの行動について、「国家の主権に対する攻撃」だとしている。
ロシアは長年、外国の選挙に干渉し、自国に都合の良い候補者が有利になるよう画策していると批判されてきた。2016年と2020年の米大統領選では、それぞれ民主党の候補だったヒラリー・クリントン、ジョー・バイデンを誹謗中傷する情報を広めたとされている。
また、米司法省は2020年、2017年に世界各地で起きたランサムウェア攻撃に関与したとして、ロシアの情報機関の関係者を起訴した。この関係者らは、同年の仏大統領選にも影響を与えようとしていた。
ロシアは2019年のウクライナの大統領選にも干渉していたとされるほか、スーダンをはじめとするアフリカの数カ国との関係についても、厳しい目を向けられている。
米政府関係者はCNNに対し、こうしたロシアの影響工作について、バイデン政権が入手した情報を“暴露”することは、ロシアが秘密裏に行っている活動を妨害するための最も効果的な方法の一つだと述べている。
今年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始した前後にも、米政府はロシアの行動に関する情報を公開し、非難していた。暴露されたロシアの計画に関する情報は大半がほぼ正確なものだったが、公開時にそれらを裏付ける直接的な証拠を示さなかったことで、米政府も批判も浴びていた。
(forbes.com 原文)