ビジネス

2022.09.14

建設DXのアンドパッドが122億円調達、海外機関投資家から選ばれる理由とは

アンドパッド 取締役CFO 荻野泰弘


米国の利上げに伴うマーケットの調整で、ミドルステージ以降のSaaS企業ではアップラウンドでの調達が難しくなっているなか、希望額通りでクローズを迎えられたのは、「マーケットの激変を織り込んで、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法で企業価値を算出したことが大きい」という。

赤字を前提とした成長戦略を基本とするSaaS企業では、評価額の算出にPSR(株価売上高倍率)マルチプル法が用いられることが多く、昨今のマーケット調整で基準となる倍率は大幅に引き下げられた。これに対してDCF法は、会社が将来生み出すフリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出するもの。相対的な価値を算出するマルチプル法と異なり、絶対価値を求めるためマーケットの調整による影響を受けにくい。

さらに、DCF法では一般的に3〜5年の予測期間で算出するところを、荻野は「この先10年間のBS(賃借対照表)、PL(損益計算書)、キャッシュフローベースを含む事業計画書を作成して試算した」と話す。スタートアップ企業がここまで大がかりの事業計画を立てるのは極めて異例だ。

「VCだと、レイトステージの調達ではIPOまでの2〜3年の事業計画だけでも納得してもらえるが、10年以上保有するようなロング・オンリーの機関投資家の場合、時価総額5000億円以下のスモールキャップ(小型株)は、そもそも相手してもらえないことが多い。ストイックなコミュニケーションに尽力した」。

また、今回の資金調達を受けてアンドパッドは、新たな戦略的投資方針「ANDPAD Second Act」を発表した。人材の採用や育成、グローバル開発体制の強化に加えて、顧客基盤やプロダクト、人材の獲得を目的とした買収・出資を重点領域に投資を推進し、成長を加速させていく構えだ。

文=眞鍋 武

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事