「仮想通貨マイニング企業は使用エネルギー量を報告せよ」米政府が勧告

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ホワイトハウスは米国時間9月8日、米国内の仮想通貨マイニング事業者が、国の全家庭のコンピュータに匹敵するエネルギーを消費する勢いであることを発表し、同業界の電力需要を抑制するための対策を規制化する必要があると訴えた。米国科学技術政策局(OSTP)が発行した最新レポートは、工業規模の暗号資産採掘者は地方および国のエネルギー供給網に負担を与え、世界規模の気候変動対策の努力を損なう恐れがあると指摘した。

当局は調査結果に基づき、マイニング事業者は国のエネルギー標準に沿って定期的にリスクを評価するとともに、自社のデータを規制当局に提供するべきであると勧告した。採掘者は後者の勧告を喜びそうにない。なぜなら一部の会社は電力購入契約とエネルギー使用に関する情報に編集を加えているからで、これは公共事業相手のビジネスでも行われている。

最も注目すべきなのは、マイニングは再生可能エネルギー源の開発を促進するという業界が繰り返し謳っている決まり文句をレポートが疑っていることだ。この信仰は「Bitcoin(ビットコイン)はバッテリーである」というスローガンを後押しした。このスローガンは、暗号資産マイニングは供給網全体にエネルギーを分配できる、などという思いつきをはじめとするさまざまな見解を誘発している。

たとえば、業界はテキサス州の電力供給網を支援していて、州は自身の大規模なエネルギー供給源を活用することで、国の「ビットコイン中心地」になったと主張している(7月に、ビットコイン採掘者のRiot Blockchainはピーク需要時の電力消費を縮小したことで950万ドル[約13.6億円]のエネルギー・クレジットを手に入れた)。仮想通貨業界は国会議員に対し、大量の電力を購入したり、風力あるいは太陽光発電所の近くに会社を設置することで、新たな再生可能エネルギーの創生に拍車をかけることができると説得してきた。しかしOSTPによると、この戦略は実際にはクリーン電力を地方コミュニティに備蓄あるいは輸送する動機づけを損なう可能性があり、そのような方針は採掘者のみの利益になることを暗示している。

今回のレポートは、3月の行政命令でバイデン大統領がOSTPその他の機関に対し、仮想通貨マイニングは「国内外の気候変動対策の努力を阻害するのか促進するのか」その可能性を調査するよう指示した結果だ。バイデン大統領の命令に答えてOSTPは、大手仮想通貨事業者に、業界はどうやって気候変動対策への悪影響を回避あるいは緩和できるのかについて意見を求めた

多くのブロックチェーンプロジェクトや業界団体、業界ロビイストらが介入し、Blockchain Association(ブロックチェーン協会)と名乗る仮想通貨ロビー団体はホワイトハウスに対し、多大なエネルギー消費を批判されているマイニングプロトコルの賛否の「時期尚早な判断」に反対している。ほかに反応を示した団体、たとえばEarthjustice(アースジャスティス)などが加盟する環境団体連合は、仮想通貨採掘者が地域の電力供給網と積極的に統合するやり方に対して警告を発している。
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翻訳=高橋信夫

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