「モガディシュ 脱出までの14⽇間」
発売⽇:2022年12⽉2⽇(⾦)
価格:Blu-ray 5,170円(税込) DVD 4,180円(税込)
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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先日、出張先のソウルで面会した韓国国家安保戦略研究院の高英煥・元副院長と映画を巡る話になった。高氏は元北朝鮮外交官。金日成主席のフランス語通訳を務めた。1980年代から90年代にかけ、8年余り、コンゴ共和国とザイール(現コンゴ民主共和国)の北朝鮮大使館で働いた。アフリカ諸国で訪れたことはないのは、レソトとマラウイだけという、北朝鮮きってのアフリカ通だった人物だ。
映画で起きた事件当時、高英煥氏はコンゴ共和国にいた。「ソマリアの朝鮮大使館が韓国大使館と協力して脱出したらしい」といううわさは、すぐに北朝鮮外交官たちの間で話題になった。高氏は「アフリカは常に政情不安定で、こうした事件には敏感でした。特に韓国と協力したという話が流れてきて、非常に驚きました」と語る。北朝鮮外交官たちは通常、韓国の外交官たちとの接触を禁じられているからだ。レセプションなどで声をかけられ、やむを得ず接触した場合は、その内容を詳細に報告することが義務づけられている。
すぐ、秘密警察の国家安全保衛部(現・国家保衛省)が調査に乗り出したが、途中で取りやめになった。高氏によれば、金正日総書記が「外交官たちを処罰すれば、これから非常事態が起きたときに、我々を助けてくれる国がなくなってしまう」と語り、調査の中止を命じたという。高氏は「将軍様は雅量のある方だ、と称賛する声が出ました」と話す。当時、ソマリアの北朝鮮書記官だったチェ・テクサン氏は、その後、駐イタリア大使に就任した。高氏は「その後の昇進を見てもわかるとおり、当時の北朝鮮大使館員たちは、国に忠誠を尽くす人物ばかりでした。ソマリアの事件も彼らの経歴にとってマイナスにはなりませんでした」と話す。
一方、映画では電気も水も満足にないソマリアで悪戦苦闘する北朝鮮外交官の姿が描かれている。高氏は「アフリカの北朝鮮大使館は、いつもクーデターなどを警戒していました」と語る。大使館にはほぼ2週間分、籠城できるだけの食糧と水を備蓄していた。駐在している国で頼りになる国とは紳士協定で、万が一の場合に備えた救援を頼んでいた。ザイールの場合は中国大使館に、コンゴの場合はソ連大使館にお願いをしていたという。「クーデターなどが起きて、大使館の維持が不可能になったら、まず重要文書を焼却し、次に無線機を破壊するなどとしたマニュアルを準備していました」
北朝鮮大使館の場合、相互監視を行うため、大使館員やその家族は集団生活を送る。高氏によれば、9割以上の在外公館では、ひとつの敷地に大使館と宿舎を準備し、全員が共同生活を送っていた。映画「モガディシュ」では、北朝鮮大使館に勤務している国家安全保衛部要員が登場する。「保衛部は10人以上の規模の在外公館には要員を派遣しますが、ソマリアのような小さな公館の場合、外交官の1人に秘密の指示を与え、他の外交官がおかしな行動を取った場合は、すぐに保衛部に報告するようにしていました」