営業などの分野では努力をノルマや売り上げの増加に直接結びつけられるが、顧客体験はそれとは異なり、つかみどころがない。顧客体験は会社の全体的な成功に寄与するもので、顧客体験が改善した企業の84%は売り上げが増加したと報告している。しかしこのつながりは、景気後退でも顧客体験施策が生き残れるほど強固なものだろうか?
筆者がリンクトインにこの質問を掲載すると、顧客体験施策は景気後退に耐えることができないと答えた人が半分以上だった。しかし筆者は、この問いへの答えはそれほど単純明快なものではないと考えている。
顧客にはサポートセンターが必要
多くの企業にとって、顧客対応部門は「コストセンター(利益を生まずコストを生む部門)」だ。しかし、顧客中心主義の企業は、顧客体験を向上させる上で顧客対応部門が持つ力に気づいている。
厳しい経済状況下では、顧客対応部門の重要度はさらに増す。インフレは日々の買い物に影響しており、顧客は予算を減らしたり、固定費を見直したり、金がどこに消えているかを見極めようとしたりしている。顧客対応部門は、特にこうした先行きの不透明な時期に、個人に合わせたサービスを提供し、顧客を支援できる貴重な存在だ。
大事なのは、こうした顧客対応部門の価値をリーダーに示すことだ。経済が厳しいときに支出を見直すのは顧客だけではなく、企業の経営陣も同じだ。顧客対応部門が生き残るためには、顧客を満足させ、個人に合わせたサービスを提供し、高い投資利益率(ROI)を達成していることを証明しなければならない。
顧客体験を景気後退に向け進化させるには
しかし、景気後退時に顧客がカスタマーセンターに電話をかけることが増えるからといって、顧客体験施策が経済の悪化に全く左右されないわけではない。顧客対応部門がたとえ大きな価値を提供していたとしても、その運営コストは高い。
米経営学誌ハーバード・ビジネス・レビューによると、景気後退に備える最善の方法は、柔軟性を高め、顧客の忠誠心を維持し、支出面で賢い決断を下して競合企業を引き離すことだ。この中心にあるのが、顧客体験だ。
景気後退時で柔軟性を維持するため、顧客体験チームはコストを削減しつつ顧客とのつながり強化し、簡単に拡張できるという3点がそろった解決策を模索する必要がある。ほとんどの場合、その答えは「テクノロジー」だ。顧客にセルフサービスのツールとオンラインのリソースを提供することで、顧客にとっては企業と接点を持つことがより楽になり、企業側も支出を削減できる。