視線だけで音楽を奏でる 難病ALSのアーティストとライブパフォーマンスで魅了

ALSと闘うアーティストたちが、視線入力でライブパフォーマンスをした


私が所属するDentsu Lab Tokyoでは、この2人のアーティストに加え、BASSDRUM、invisiなどとの協業チームとともに、3つのあたらしい演奏ツールを開発しました。いずれも目の動きだけで操作可能なUI(ユーザーインターフェイス)です。


EYE XY PAD

1つ目は「EYE XY PAD」。X軸とY軸の座標に武藤さんとPoneさんが作曲した音やエフェクトのパラメーターを設定し、目の動きだけでリアルタイムで自由に、そして、これまでに聞いたことのない音色を奏でられる演奏ツールです。

まるでハープのように自由で面白い音色が奏でられ、設定を変えれば変えるほど楽しめる奥深い楽器です。子どもや高齢者などをはじめ、楽器にそれほど親しみのない人たちへの楽器としても拡張できると思っています。


EYE XY PADをつかって演奏する様子


次に、「EYE MIDI PAD」。2人との会話の中で出てきた「これまでの演奏ツールは健常者ベースでつくられているので、視線入力だけでは難しい。作曲では使えるがリアルタイムの演奏には向いていない」という声をもとに開発しました。

MIDIコントローラー(電子楽器の演奏データを作曲ソフトに入力するためのコントローラー)の大きなパッドのUIをカスタマイズし、リアルタイムでより容易なトラック操作を可能としました。


EYE MIDI PAD

最後が「SHOOTING PAD」。これは、武藤さんの言葉がきっかけでした。武藤さんは普段DJをやっているのですが、移動などさまざまな制約があり、オンラインでDJができたらいいなと考えていたそうです。ただ、ネットワークの遅延がどうしてもネックになっていました。DJにとって、わずかなズレは致命的です。

そこで、音楽のズレを自動的に調整しながら、かつUIそのものを動かすことで、ストレスなく演奏できる装置を開発しました。このUIを動かすというアイデアは、オーディオ・ビジュアルアーティストの赤川純一さんによるものです。

これも、今後さまざまな人がリモートでのライブ演奏に役立つツールに拡張できるアイデアです。


SHOOTING PAD
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文=田中直基

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