「Yコンビネータは、人々の夢を様々な形で叶えるコミュニティだ。その現場に戻れることに興奮している」と、タンはフォーブスの取材に語った。
現在41歳のタンは、2012年にレディット(Reddit)の共同創業者アレクシス・オハニアンと設立したイニシャライズド・キャピタルの仕事から退く予定だ。コインベースやインスタカート、Flexportの初期投資家として知られるタンは、過去4年間フォーブスの世界の投資家ランキングの「ミダスリスト(Midas List)」に登場し、直近では28位にランクインしていた。彼はまた、2022年の第1回のミダスリストのシード版(Midas Seed List)では4位に入っていた。
2005年にポール・グラハムとジェシカ・リビングストンの夫婦と他の2人によって設立されたYCは、これまでエアビーアンドビーやストライプ(Stripe)、ドロップボックスなどの世界的企業を送り出してきた。YCのプログラムは、その狭き門でも有名で、夏と冬の「バッチ」に寄せられる応募は2万件以上で、合格率は1.5〜2%程度とされる。
同社はこれまでに3500社以上に出資し、約80社のユニコーンを送り出した。
YCはグラハムの後継者であるサム・アルトマンとラルストンの下で急速な拡大を遂げ、投資範囲は拡大し、技術エコシステムにおける知名度も向上した。現在、同社は参加企業に50万ドルを投資する見返りに、最低でも7%の株式を得ることを想定しており、その後の企業の調達ラウンドによっては、さらに多くの株式を得ている。
目標は1バッチで1000社に投資
YCはパンデミックに対応して完全リモート化した2021年にも、750社に資金を提供していた。ラルストンは昨年12月のブログで、将来的に1バッチあたり1000社のスタートアップに資金提供したいと語り、大きな話題となった。
しかし、この夏、YCはサマーバッチを40%縮小し、本社をマウンテンビューからサンフランシスコに移す計画を中断した。それでも、ラルストンとタンは、YCのエンジニア主導の精神が、今後も実験を続ける原動力になると確信している。「近い将来、1000人規模のバッチが生まれるかどうかは分からないが、私はその可能性があると信じている」とラルストンは語った。
ラルストンは、タンが完全にリーダーシップを発揮したら、YCを去る予定という。「3年強の在任期間中に私は、サム(アルトマン)が示した方向性に変化を加えたが、ギャリー(タン)にも同じことを期待している」と彼は話した。
タンが不在の間、彼のVCであるイニシャライズドは、マネージング・パートナーのジェン・ウルフとブレット・ギブソンが指揮を執ることになる。同社は、同じブランディングと現状のパートナーシップの下で継続されると、ウルフは説明した。
「世界には豊富な資金があるが、起業家にとってのチャンスはそれほど多くない」とタンは語る。シンガポールからの移民の両親の下に生まれた彼は、独学でプログラミングを学び、14歳で親たちの住宅ローンの頭金を稼ぐためにウェブページ制作の仕事を始めたという。
「YCは、起業家のための道しるべのような場所だ。ここで出会った人々は、私に多くのものを与えてくれた。今度は私がお返しをする番だ」とタンは語った。
(forbes.com 原文)