年齢別の幸福度、最も低いのは高齢者ではなく中年世代

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心身の能力低下や衰退を理由に加齢を恐れる人は多い。しかし、米誌ナショナル・ジオグラフィックとAARP(全米退職者協会)が米国で最近実施した調査では、年配者は多くの人が思うよりもはるかに幸せであることが示された。問題を抱えているのはむしろ、子育てや仕事、病気の親の世話といった心配事が多い中年世代の方だった。

調査結果をまとめた報告書によると、40歳未満の多くが退職後の収入源について明確な考えを持っていなかった。一方で高齢者は、運動や栄養ある食事を優先する傾向が若い人よりもずっと強かった。

「引退」はそれ自体が進化し続けている概念であり、定年の高齢化については頻繁に議論されている。調査では、引退前の回答者の多くが、自分が引退したいときに引退できると考えていなかった。

だが新型コロナウイルスの流行は、多くの人が早期退職する現象を生んだ。調査でも、退職生活者の大半が、引退時期は自分の予想よりも早かったと回答。一方、引退はせず生涯働き続けたいという人は14%と少数派だった。

不足する中年世代への支援


人生で最も大変なのは30代から40代だ。米ダートマス大学が行った幸福に関する研究では、年齢と幸福度のグラフは明白なU字曲線となり、人生の大きな出来事が集中する20年間に幸福度が最も低くなっていた。中年の時期には子育てや仕事、キャリア構築、親の世話や地元のための活動といった、時に両立できないニーズを満たす必要があり、思わぬ大きな負担が生じる。

今回の調査でもこの点が裏付けられ、40歳未満の人は心の健康を最優先事項としていることが示された。この年齢層に対するケアとサポートは、特に米国では不足している。人生の後半への注目は大いに歓迎すべきだが、支援が必要な人の多くが実は人生の前半にいるということは意外かもしれない。

「健康」は相対的な概念


回答者は概して、自分がどれほど長く生きられるかについて大きく心配していなかった。長寿について気にしない傾向は、既に長生きしている人ほど強かった。報告書は「死は恐れるべきではないが、備えるべき」としている。回答者の大半は、経済面や法律面、人間関係の面で死に備えていると答えた。

回答者は、健康であることとは、自立し、動くことができ、頭がしっかりしていることと定義していた。興味深いことに、体の衰えは自分の健康状態に関する認識に影響を与えていなかった。
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編集=遠藤宗生

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