16年前、冥王星が惑星ではなくなった理由と経緯

(c)NASA


冥王線が冷遇されたのは、これが初めてではない。NASAのボイジャーが太陽系の外惑星を訪れるグランドツアー計画では木星、土星、天王星、海王星を見届けた後、冥王星を訪れることなく1990年に終了した。ボイジャー2は175年に一度の惑星直列によって可能になった重力アシストを利用して、海王星の後に冥王星へ向かうこともできるはずだったが、NASAの科学者たちは海王星の月であるトリトンを見ることを優先した。

惑星が降格されたのも2006年が初めてではない。遡って1801年、小惑星帯で最大の天体セレスが発見され、火星と木星の間の「失われた惑星」であると説明された。そのすぐ後に単なる小惑星へと降格されたが、冥王星を降格させた同じ2006年のIAU会議はセレスを準惑星に昇格させた。

そのためのミッションがいずれも進行段階にあった太陽系の2つの天体の地位を巡って投票が行われたのは皮肉なことだった。ニュー・ホライズンズは2006年1月に冥王星に向けて打ち上げられ、その1年後には探査機ドーンがセレスへと打ち上げられた。

2つの「新しい」準惑星は、惑星科学者たちが期待したよりはるかに大きい存在であることが明らかになった。どちらもエウロパ(木星の月)やエンセラダスとタイタン(土星の衛星)などと同じ「オーシャンワールド(海の世界)」の候補であることが示された。



ニュー・ホライズンズは、2015年7月14日に冥王星を通過したとき、太陽系のどこよりも魅力的な世界を映し出した。

探査機は、冥王星がすべての科学者の途方もない夢の上を行くものであることを示した。そこは地質学的に活発であり、火山活動的に、さらには構造学的にも活発である可能性がある。

地球より太陽から40倍も遠いこの地で、冥王星には独自の複雑な大気、地表に有機化合物、地殻に巨大な断層があることが明らかになった。そこは窒素氷からなる広大な平原や山脈、砂丘そして「氷の火山」もある驚くべき地質学的複雑性をもつ場所だ。

冥王星で発見されたこのさまざまな豊かさを考えると、ニュー・ホライズンズの接近飛行の後であれば、IAUが惑星の地位を剥奪することはなかっただろう。

冥王星の興味をそそる世界には、氷原の下に海があるかどうかを調べるためのリターンミッションを実行する価値がある。いつの日か私たちはそこをオーシャンワールドと呼ぶだろうが、おそらくその頃までにはそれも別の名前になっているだろう。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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