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2022.08.24

次のユニコーンとして期待のファブレス半導体「Astera Labs」の実力

Getty Images

ファブレスのチップメーカーの「Astera Labs」の共同創業者であるJitendra Mohan、Sanjay Gajendra、Casey Morrisonはテキサス・インスツルメンツに勤務していたときに知り合った。彼らは、データセンターの接続性がAIや機械学習の進歩に追いついていないという課題を解決する新たなチップの開発を思いつき、Astera Labsを創業した。

「AIと機械学習は、非常に速いスピードで進化している。このアイデアを思い付いたときは、目から鱗が落ちる思いだった」と、同社のチーフ・ビジネス・オフィサーであるGajendra(48)は話す。

3人に起業の経験はなかったが、データセンター向けにデータフローを維持する接続ソリューションを開発するため、彼らは2017年に会社を辞めてカリフォルニア州サンタクララでAstera Labsを設立した。同社は、工場を持たないファブレスチップメーカーで、クラウド上でチップを設計することでプロセスを高速化し、半導体大手のTSMCに製造を委託している。

データセンターの急成長を背景に、Astera Labsは今年のフォーブスの「Next Billion-Dollar Startups(次世代のユニコーン)」に選出された。このリストは、VCが支援するスタートアップの中から、評価額が10億ドルに達する可能性が高い企業を選出するものだ。Astera Labsには、フィデリティやインテルのVC部門であるインテルキャピタルの他、テック分野の連続起業家であるAvigdor Willenzなどが出資しており、直近の評価額は9億5000万ドル(約1300億円)に達する。

同社は、半導体企業としては初めて「次世代のユニコーン」に選出された。

「半導体市場の現状を見れば、そろそろユニコーン企業が誕生して良い頃だ。我々の目の前にはそのチャンスが広がっている」とCEO(最高経営責任者)を務めるMohan(49)は話す。

競合他社が、AIを活用したチップの高性能化といった華やかな新技術に取り組んでいるのに対し、Astera Labsは、地道に接続を高速化することに専念した。「当時は、接続が単純なものになると思われていた。我々がやっていることは華やかではないが、必要なことだ」とGajendraは言う。

今年は売上1億ドル突破へ


3人の創業メンバーは、資金調達が想定以上に早く進んだことに驚いたという。「Willenzは、会って5分も経たないうちにプレマネーとポストマネーの評価額を紙に書いた。我々にとって進捗が早すぎたため、これらの用語の意味すらわからず、その場でグーグル検索をしていたほどだ」とGajendraは話す。

創業メンバーらは、アマゾンのAWSを初期の顧客として獲得するため、コネを頼って営業をかけ、データセンターのボトルネックを解消するために彼らのソリューションが必要であることを説明した。

現在、Astera Labsは異なるボトルネックを解決する3種類の製品ラインを提供しており、AWSに加え、グーグルやマイクロソフトなど数十社が同社の製品を利用している。昨年、同社の売上高は3500万ドルに達したと見られ、今年は1億ドルを超える見込みだ。

サプライチェーンの混乱によってチップの出荷が遅れる中、Gajendra によると、Astera Labsは3〜4カ月のリードタイムで出荷することで差別化を図っているという。「今日の業界において、これは非常に重要なアドバンテージだ」と彼は述べた。

編集=上田裕資

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