ビジネス

2022.08.22 08:00

「花業界をサステナブルに」で成長する、ユーザーライク経営の秘訣


──具体的な仕組みはどのようなものか。

廃棄問題は、流通の問題に加え、生産の問題もある。それがいわゆる「規格外」と呼ばれるものだ。花には、品目や地域ごとに茎の長さや曲がりといった「規格」が存在し、これらに合致しない場合、品質や見た目がよくても「規格外」となり、価値がつきにくい。

僕らは21年7月、日本最大の花市場を運営する大田花きと連携し、新しい花の流通規格「ブルーミー規格」に基づき「規格外」の花買い取りを拡大させてきた。僕らは茎が多少短くても、サービスには問題がない。そうした規格外の花を、生産コストに対する適正価格で、年間を通して買い取りしている。この新しい規格については、僕らが作ったというよりは、大田花きさん、そしてその先の生産者のみなさまと一緒にやっているという感覚が強い。

僕らは22年3月には、関西の花市場である「京都生花」とも提携し、同様の取り組みを開始し、全国へ拡大していく。「ブルーミー規格」での累計買い取り数は10万本を突破。こうした取り組みが、花き生産・流通の拡大、効率化につながるのではないか。

──それ以外に共同研究にも取り組んでいる。

はい。大田花きや生産者、研究機関と連携し、花のサプライチェーン全体での品質向上を目的とした共同研究も開始している。これまでサービス運営をするなかで、サプライチェーンの難しさをすごく感じた。これまでは配送する箱を含めた「配達面」の改善をしてきたが、限界を感じたこともあり、たとえば、低濃度の塩素系ガスによる「カビ菌」抑制の実験をはじめ、生産者から消費者に届くまでのサプライチェーン各工程で様々な実験を行い、サステナブルでクリーンな流通環境へとアップデートすることを目指す。

──約20億円の資金調達も実施した。今後の戦略は。

さらなる顧客拡大、プロダクト体験の強化、サステナブルな仕組み作りの推進を行う。コロナ禍で競合も増えた。ただ、花というサプライチェーン構築が難しいなかで、経験値とデータを用いて愚直に努力してきたことによる「品質」には自信がある。

また、「ブルーミー規格」を用いることで、単純にロス(廃棄)を減らすことに加え、生産者の栽培期間の短縮にもつながる。同期間での栽培回数が増えることで、生産者の収入増にもつながり、僕らに必要な安定的な仕入れにもつながるという好循環も生むことができる。結果的に、サステナブルになる。

僕らはこれまで「ユーザー起点」で常に顧客から事業運営を考えてきたことが、こうした花業界全体に貢献し、かつ、持続可能な仕組み構築といった発展へとつながってきた。22年1月に社名を現在のユーザーライクに変更し、「ユーザーさんの、うれしいを創る」をミッションとしながら、花以外のカテゴリーへの事業拡張も見据えている。

文=山本智之 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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