ほとんどの化石は、骨や貝殻、歯などの硬い組織を永久保存しているが、特殊な条件下では皮膚や筋肉、臓器などの柔らかい組織が化石になる場合がある。
しかし、なぜ一部の内臓が他の内臓よりもよく化石化する傾向があるのかという疑問が、科学者たちを悩ませてきた。そこで、レスター大学古生物学センターの研究者らは、腐敗した魚の体内の化学反応を2カ月半にわたって観察する実験を行った。
その結果、特定の組織の化学的性質が化石化を促進していることが分かり、ある器官が詳細に保存される一方で、他の器官が時間の経過とともに失われていく理由も説明された。
現在はバーミンガム大学に移籍したトーマス・クレメンツ博士は、レスター大学の博士課程に在籍中にこの研究を主導した。彼によると、「柔らかい組織が岩になる場合の、最も特徴的なプロセスは、それらがアパタイト(リン酸カルシウム)と呼ばれる鉱物に置き換わることだ」だという。科学者たちは、このプロセスがどのように起こるかを理解しようと、何十年もリン酸カルシウムを研究してきた。
しかし、どうしても解明できない謎は、なぜある内臓が他の内臓よりも保存されやすいのかというものだった。
「我々は、腐った魚を観察する実験を行い、それは、うんざりするような嫌な臭いがするものだったが、興味深い発見をした。内臓はすべて一緒にスープの中で腐っていく。つまり、臓器が化石になる可能性を支配しているのは、臓器特有の組織化学なのだ」とクレメンツ博士は述べている。
軟組織が石灰化するためには、その酸性度が閾値を下回る必要があり、十分な酸性度がある場合は、リン酸カルシウムなどの鉱物が化石化のプロセスを開始する。このため、消化器官のようにすでに胃酸で満たされている器官は、化石化に必要な酸性度を達成しやすいのだという。
論文の共同執筆者の古生物学者のサラ・ガボット教授は、「魚が腐る様子を記録したり、その匂いを嗅いだりすることは、古生物学者が動物のどの部分が化石になりやいかを理解する上で極めて重要だ」と述べている。
「私たちはこの結果にとても満足している。例えば、なぜ化石には動物の腸がよく保存されているのに、肝臓が保存されていないのかが説明できるようになった」と、ガボット教授は付け加えた。
この論文は科学ジャーナルのPalaeontologyに8月8日に掲載された。論文のタイトルは「Experimental analysis of organ decay and pH gradients within a carcass and the implications for phosphatization of soft tissues」とされている。