どのようなマネジメントモデルを好むかにかかわらず、優れたリーダーにとって必須の特性がある。「近づきやすさ(approachability:アプローチのしやすさ)」だ。といっても、心のドアをいつも開けっぱなしにしているとか、おおらかな性格という意味ではない。あなたが聞いておく必要のある情報を、周囲の人たちが安心して、あなたに提供できるという意味だ。
こうした近づきやすさを備えていれば、部下に対して、不満に思っていることや、意欲をくじくもの、苦労していることを教えてほしいと質問したときに、率直に打ち明けてもらえるはずだ。
リーダーシップスキルとしては単純なように思えるが、近づきやすいリーダーであるためには、いくつかの異なる振る舞いや姿勢が求められる。
まずは、部下から充分な信頼を得る必要がある。進言した人を非難する事例が多すぎると、部下は、重要な知らせや悪い知らせを伝えるどころか、隠すようになるだろう。
第二に、近づきやすいリーダーになるためには、人の意見を取り入れ、提案や苦情を積極的に検討することも必要だ。残念ながら、筆者が創業したリーダーシップIQが実施した調査「The State Of Leadership Development(リーダーシップ育成の現状)」で明らかになったように、「自分の上司は、改善のための提案をするよう、常に奨励し、その重要性を認識している」と回答した従業員は27%にとどまっている。
最後に、近づきやすさには、共感して耳を傾けることが求められる。部下が、仕事上の問題を打ち明けるために上司に電話をかけたとき、その上司がこう答えたとしよう。「人生はフェアなものではない。それに文句を言っても、なんの役にも立たない」
これでは、そう遠くない未来に、部下は上司に近づこうとする考えをいっさい捨ててしまうだろう。耳を傾けることは簡単なスキルのように思えるが、インターネット調査「Do You Know How To Listen With Empathy?(あなたは、共感を持った聞き方を知っているだろうか?)」で完璧なスコアを記録した回答者は3分の1に満たなかった。