吉川:ここ数年、暗号資産に関する規制動向は混沌としていましたよね。米国では暗号資産の分類法についての明確なガイドラインすらない状況です。さまざまな省庁が権力争いでそれぞれのルールを決めようとしていたのですが、これは個々の省庁のレベルではなく、国としてのクリプトポリシーが必要だという認識が高まり、先日、大統領令が発令されました。現在は議会が法案を作っており、今年の年末から来年にかけて色々と動きが出てくるだろうと思います。
日本から見ると、米国は暗号資産に関してあらゆる面で進んでいるという印象を持っている人が多いかもしれませんが、規制という観点からいうと、じつは他国よりも遅れている部分も多く、シンガポール、英国、日本のほうが米国よりも進んでいる、という印象を持っている米国人が多かったりするんです。「隣の芝生は青い」的なものも多分にあるとは思いますが。一方で、日本はいち早く暗号資産に関するルール作りに着手して当初は他国よりも一歩前に進んでいたものの、その後かなり停滞してしまったという印象ですが、どう見ていますか?
「Web3に対する関心は減退するどころか、引き続き拡大している」(筆者)
近藤:17年に世界で初めて暗号資産についての法律が日本で施行されました。その後、18年に大きなハッキング事件が起きたことにより、当局もさらなる安全性の強化に乗り出し、20年には資金決済法および金融商品取引法の改正法が施行されました。
これにより日本では参入コストや参入後の維持管理コストも上昇していき、維持できない企業の撤退やM&A(合併・買収)が進み、現在は大手系傘下の交換業者が主流になっています。取扱銘柄のルールも厳格になり、当局審査が必要ななか、各社の取扱申請が当局に集中したこともあって審査が進みづらい状況が生まれ、その結果、日本における暗号資産の取扱銘柄種類に関しては世界に後れをとってしまいました。
世界の暗号資産取引の半分以上を日本が占めていた時期もありましたが……。レバレッジが4倍から2倍に抑制されたことも影響し、現在では大きく減少しています。巻き返しには暗号資産のユースケースの拡大や、現在のWeb3の潮流を活かせるかがカギになってくるだろうと考えています。
<後編に続く>
連載:米国発、次世代金融動向を読み解く
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